題詠100首選歌集(その72)

 あと1日。ランナーのペースも随分上がって来た。もっとも、今日は選歌集を二つくらい載せることになるかと思っていたのだが、目下のところそれほどでもなさそうだ。


          選歌集・その72



022:カレンダー(207〜231)
(清次郎)紫陽花の絵が祖父を待つカレンダー二千六年六月のまま
(月原真幸) 来年の今日まで生きている予定 カレンダーにも印をつけた
(片秀)ぐるぐると赤く記したカレンダー昨日はあなたに会える日だった
026:丸(205〜229)
ひぐらしひなつ)てのひらの窪みに零す丸薬のひかり か細き雨は途切れず
(片秀)正解と言いつつ丸だと笑いつつもう会うまいと決心をする
(ひいらぎ)ドーナツの丸い穴から見た世界どこかで君に繋がっている
(勺 禰子)つややかなうるめ丸干し卓上に死は先端の生としてあり
(小倉るい) 春寒や丸めた肩になごり雪 盛岡駅の乙女18歳(じゅうはち)
(月原真幸) 人生の答え合わせはしない主義 花丸くらい自分でつける
(水風抱月)漆黒のひかりとも似る君の眼が穿つこころに丸い日溜まり
(竹中 えん)詩とは死の支流となりてひもすがらことばと眠る丸山薫
058:脳(154〜178)
(山口朔子) 右脳から毎晩きみがやってきて愛のひとつも囁かず去る
ひぐらしひなつ)触れたこと脳(なずき)に記憶させながらほどけるようにきみを離れた
072:コップ(130〜154)
(ワンコ山田)宿題は雨を集めた紙コップ明日の朝まで虹を沈めて
(南雲流水) コップ酒 手の温もりで燗をするそっと古傷いたわるように
(小倉るい) 亡き人の愛用のコップ探し出し隠れてキスする夕暮れの部屋
078:指紋(129〜155)
(bubbles-goto) 選ぶとはその他すべてを捨てること 指紋に残る朱肉を拭う
(さくら♪) 風花が舞い散る寒い夜でした重ねた指紋覚えてますか
(O.F.) 地下鉄のドアに息吹きかけたなら昨日のわたしの指紋が浮かぶ
(南雲流水)ipodの画面に触れしあの人の指紋の上にフィルムを貼りぬ
(蓮野 唯)ガラス窓指紋の向こう遠ざかる青い雨傘青い初恋
(小倉るい) CDに付いた指紋が不器用な私を笑う音を奏でる
(一夜)許されぬ逢瀬で残る余韻から あなたの指紋全部拭き取る
(纏亭写楽) 拭きたてのグラスについてる指紋にはぶどう畑の景色がうかぶ
079:第(130〜154)
(田中ましろ) はじめから落第点の恋をして上昇志向ばかり身につく
(豆野ふく) 「第三の男」流れて君の乗る電車は僕を置いて出ていく
080:夜(132〜156)
(こなつ)君恋し星の見えない夜だから 雨だれの数かぞえてばかり
(南雲流水) 水彩で夜色を溶く夜色は寂しい犬の後ろに残る
(イノユキエ)通夜の場はほどよく冷えて焼香を待つふくらはぎが締まりはじめる
(纏亭写楽) この夜をたぐり寄せては敷き詰めて夜の地層を積み重ねている
082:弾(126〜150)
(闇とBLUE) 日焼けした五人の少女がまとってるパステルカラーの弾む公園
(南雲流水) 鳳仙花弾けたあとの静けさはふいに途切れたメールのように
099:イコール(101〜130)
(村木美月)イコールで結べぬ答え持っていてあなたにそっと耳打ちしたい
(だったん) イコールな気持ちかどうかわからずに次はいつとか言えないでいる
(五十嵐きよみ)イコールでどうにかつないだ結末のモーツァルト的くすくす笑い
(田中ましろ) 答えなどなくていいのにイコールはふたりの時間に終止符を打つ
(さと)イコールで結べぬ胸の内は秘め 似たもの同士寄り添っている
(わたつみいさな) 何かある気がして歩く12月イコールのまだ向こう側まで
100:福(101〜127)
(こゆり)微笑んで祝福するのも楽じゃないみんなあたしを二番目に好き
(ワンコ山田) フィナーレは祝福の歌遠くから途切れ途切れに降る夢の中
(田中ましろ) くちもとに大福もちの粉をつけ食べてないよと言う君を抱く