題詠100首選歌集(その1)

 今年も題詠100首がスタートし、自作の投稿も10番まで進めたので、そろそろ選歌に手を付けたくなった。25首以上のもの10題という私の勝手な基準にはまだ遠く及ばないのだが、1番や2番は多数の作品が集まっているので、最初だけはルールを乱してスタートしたいと思う。
 いざ手を付けてみると、お馴染みの方のお名前も懐かしいし、はじめてらしき方のお名前には新鮮さを感じる。これから長丁場、当面自作の投稿と選歌をジグザグに進めて行きたいと思っている。
 選歌スタートに当たっての腰折れを1首
   馴染みたる人の名前もなつかしく題詠百首の選歌はじめる

 例年通り、至って勝手気ままな、何の権威もない選歌だが、私の遊び心に免じてお赦し頂きたい。なお、終わったところで百人一首を作ろうと思っているのも例年通りである。


        選歌集・その1


001:初(〜72)
(tafots) 宿題の書初め2月の教室の背景として色褪せてゆく
(行方祐美) 初他火の馳走の赤飯かをりゐつあづきの苦手な女の子われにも
(夏実麦太朗)初夏の光をまとう麦畑は冥王星の軌道をほどく
(鮎美) 初七日の法要四日繰り上げて生くる者たち生きてゆくべし
(史之春風) ふるさとを離れて最初の夜だからサボテン相手に乾杯しよう。
(コバライチ*キコ)初釜のあした淑気のただよひて庭も道具もかしこまりをり
(青野ことり) 初めての朝初めての春の声初めてばかりをきょうも生きてる
(五十嵐きよみ) 恐れつつ心をまるごと奪われた初めて海を目にした夏に
(紫苑)あかねさす紫の芽の吹き初めてミモザ枝垂るる冬のひだまり
002:幸(〜55)
(tafots) 「傾向と対策」を解くその脳で『幸福論』を貶めていた
(ももか)幸せを詰めたほっぺたなんでしょう小さな丸い手足がはしゃぐ
(史之春風)当たり前みたいに幸を消費する街の灯りが生傷に沁む。
(オリーブ)坂道の途中にあった幸せを 自転車からは拾えなかった
月夜野兎)花嫁に幸多かれと拍手する夕飯メニューを考えながら
(畠山拓郎) 幸せになりたい想い大きくて待ちきれなくて今日は立春
(紗都子)泥はねのブーツにもある幸せを冬の舗道にさらさら零す
003:細(〜44)
(吾妻誠一)二条(ふたすじ)がピカピカ光る細魚寿司 海を照らした記憶いただく
(オリーブ) 三日月が細まってゆく草原に うさぎを探しに行った夕暮れ
(梅田啓子) 夏を越しミニシクラメンの蕾もつ細き茎にはほそき貌つけ
(畠山拓郎) 細心の注意を払い選びおり君が好きだと伝える言葉
(紗都子) 目を細め見上げる空はいくたびも重ね塗りした郷愁の色
(牛 隆佑) 電燈は時に暴力的なもの闇のか細さ 君に似ている
(みずき)蝶翅と揺れゐる蘭の細やかな風の行方か海の遠鳴る
(猫丘ひこ乃) 細道の鮮魚店にはなまぬるいイカソーメンの雨が止まない
004:まさか(〜31)
(鮎美)たまさかに巡りあひしを一生涯のよろこびとして君と別れむ
(吾妻誠一)雨上がり街へ駆け出す僕の背へ たまさか鳥も夏を知らせる
(紗都子) あまさから苦さへ至る道すじを君におしえるカラメルソース
(梅田啓子) たまさかの逢いに二月の街をゆく被膜のとれたひかりの中を
(みずき) 敗戦をまさかと思ひし遠き日と同じ空なる八月の青