題詠100首選歌集(その19)

 やはり投稿のペースが落ちているような気がして去年と比べてみたら、去年の「その19」は4月13日付けになっている。ということは、ペースが落ちているというのは、私の先入観のせいなのかも知れない。もっとも、「026」の「震」の投稿が途中で止まってしまっているような気がする。「そのものズバリ」過ぎて、かえって作品が生まれにくいのかとも思う。


         選歌集・その19


013:故(103〜127)
(南雲流水)捨ててきた街は春雨けぶる頃 何もしてやれなかった故郷
(牧童) 故障した時計の隅の綿ぼこり母子草咲く心の部屋で
(伊倉ほたる)何故だろういつまでも憎みきれなくて春を重ねてアイロンあてる
014:残(103〜128)
(nahema)君といた街の景色のあちこちに幸せな日の残像を見る
(萱野芙蓉) しまはれて粘土の象は箱のなか耳のかたちがひしやげて残る
(南雲流水) 触れてゆくもの達がある残像としてアルバムに貼られぬ写真
(小夜こなた)瓦礫から瓦礫へ風が吹き抜けて歪んだままの残像を追う
(花夢) 残飯をあさりたくなる衝動に堪えてなんにもない午前2時
015:とりあえず(104〜128)
(富田林薫) とりあえずともしてまわる蝋燭にねがいのようなちいさな炎
(水絵) 人混みで声掛けられてとりあえず 頬笑みながら記憶まさぐる
019:層(81〜106)
(五十嵐きよみ) 乱層雲ひくく垂れ込め永遠にやむことのない雨よ、降り出せ
020:幻(78〜104)
(青野ことり) 朝がきて夢幻だったらどんなにかよかっただろう 春は足踏み
(南雲流水)紙風船吹く唇の薄紅は幻灯写真に透ける暮れ色
(小夜こなた) 生むあてを絶ちし吾が子が花影に「元気ですか」と揺れる幻
025:ミステリー(52〜76)
(牛 隆佑)読みさしのミステリーから脱け出して真実だけの世界に還る
(葵の助)幼子と暮らすと起こるミステリー失くした物があり得ぬ場所に
036:暑(32〜57)
(尾崎弘子)暑き日はお化け屋敷に盆踊り公民館の夏の思ひ出
037:ポーズ(33〜57)
(水風抱月) 静止画の如き窓辺にポーズしつ眸ばかりがわたしに挑む
(原田 町) 節電はポーズだけかもエアコンや電子レンジの暮らしに慣れて
041:さっぱり(26〜50)
(保武池警部補)伊予の帰路舌にさっぱり残りおりこの利発さにだじろぎの宵
(猫丘ひこ乃)つながっていたものさっぱりつながらず夜はこんなに暗いのですね
082:万(1〜25)
(こはぎ) さよならを言われるために一万秒待ち続けてる駅前は、雨