題詠100首選歌集(その25)

 やっと第100番が25首に届いた。随分焦らされたような気がしたのだが、去年のブログを見たら、選歌が第100に届いたのは5月27日になっている。ということは、去年より20日早いペースということになるようだ。

          選歌集・その25


020:幻(105〜129)
(伊倉ほたる) 口づけをせがむグロスをかわしつつ幻覚めいて花びらは散る
(紗都子) ひたむきな顎のラインをとがらせて君が見上げる空は幻
(佐田やよい) 曖昧な記憶のような明るさが幻灯機から零れれば冬
032:町(51〜78)
(豆田 麦)入道雲背負って走った海沿いにいい風が吹く ぼくらの町だ
(原田 町) 区画整理されし町の名大字や小字も消えて「さくら」や「みどり」
(コバライチ*キコ)この町が七つめなのと言ふ少女転校生の微笑み見せて
(青野ことり) とりたてていうこともない町の路地 子どもが遊ぶ声がするだけ
(新井蜜)我が町に住む三人の叔母達が夜中に集ひ煮るあづき粥
(湯山昌樹) 少しずつ人減りてゆくわが町の夜を走ればシャッターの鳴る
(うたのはこ)うつむいて門前町の石畳かけた願いを悟られぬよう
033:奇跡(51〜76)
(原田 町)ハイビジョン画面の中のファン・アイク髪の毛一本一本の奇跡よ
(新井蜜)夕闇の起こした奇跡一夜すぎ朝焼けのなか色あせてゆく
(廣田) 黄昏が降りる時刻の三叉路で君に奇跡が降りるのを待つ
044:護(26〜50)
(三沢左右)傘を持つ少女が一人警護するように立ってる雨の一幕
(梅田啓子)知らされず知ろうともせず生きて来て白き防護服うごくを観ている
(原田 町)改憲か護憲かきみと言いつつも余震のつづく日々を生きてる
045:幼稚(26〜50)
(はこべ) 遠くから幼稚園児の声きこえ小春日和のベランダに佇つ
(ほたる) 初めての交換日記の告白は幼稚な文章 でも恋だった
046:奏(26〜51)
(猫丘ひこ乃) 奏でたい想いは音にならなくて祈りにかわる夕暮れのとき
(Yosh)前奏なく間奏なくて終焉の楽曲流れ人一人逝く
048:束(26〜50)
(香村かな)紫の糸で束ねた想い出を春の海へと流す夕暮れ
(草間環)束の間の安息日には近道でわたしの生まれ故郷に帰る
(ほたる)夢覚めてうつつの朝の光浴び君はきりりと髪を束ねる
(足知) 後ろ手にあなたは髪を束ねつつ夜の気配を綺麗に消した
096:取(1〜25)
(tafots)取手行き列車の叫ぶ音階を録りためている携帯電話
098:味(1〜25)
(横雲)三味の音に惹かれて雨の春の街そぞろ歩けば人の恋しき
(みずき) 味けなき日日のあはひの愚かさを激する心玻璃に映せり
(船坂圭之介) 色薄きトマトの味の心地よく舌に泳がす遠き思ひ出
(保武池警部補) 回廊(コリドオ)で 旨味(うま)し酒もて火を呼べよ 追ひても消さじ 舞うて踊り子
100:完(1〜25)
(みずき)完璧に活けたる菊の寂しさを秋思と思ひつ歌集捲りぬ
(オリーブ) 霧包む立夏の雨に完璧な別れ演じた藤棚の下
(葵の助)完結はしない彼らの人生は連載小説終わった後も