成長期の終り・・平成22年国勢調査(スペース・マガジン7月号)

 例によって、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。


      [愚想管見] 成長期の終り                西中眞二郎


 これまでに何度かご披露したように、国勢調査の結果に基づいて人口データ等を整理分析するのが、私の最大の道楽である。皆様ご存じのように、国勢調査は5年に1度行われている大調査だが、昨年10月1日現在で行われた平成22年度調査の速報値が去る2月末に公表された。以下その結果を、サワリだけざっと眺めて行きたい。
 今回の速報値による我が国総人口は1億2805万6026人であり、5年前の前回調査に比して、28.8万人、0.2%増と、極めてわずかではあるが増加を示した。今回の調査ではてっきり減少の数字が出ると思い込んでいたのだが、これは意外な結果だった。しかし、大正9年の第1回調査以来、終戦直後の昭和20年調査を除き最低の伸びであり、我が国がこれまでの「人口増」とは異なる路線を歩みはじめたことは確かだろう。
 これを都道府県別に見てみよう。最も増加率が高かったのは東京都で4.7%の増、以下神奈川県、千葉県、沖縄県滋賀県、愛知県、埼玉県、大阪府、福岡県と続く。増加したのは以上の9都府県のみであり、前回の15都府県を大きく下回っている。この9都府県は、いずれも前回に続いての増加であり、東京都、神奈川県は、前回に引き続き1位、2位を占めている。また、地方別の合計を見ると、これまで増加していた中部、近畿の両地方も減少に転じ、増加した地方は関東地方だけになった。他方、最も減少率が高かったのは東北地方でマイナス3.1%、このたびの大震災で、減少傾向に更に拍車が掛かることが懸念される。
 それでは茨城県はどうか。ずっと増加基調にあった茨城県も、前回調査以来ごくわずかではあるがマイナスに転じ、今回は0.2%減となった。総人口は296.9万人であり、このところ全国第11位の人口規模が続いている。
 ところで、ここ10年ばかり続いた大合併の結果、全国市町村の数は、平成12年の3,230から、昨年10月1日現在1,728市町村と、10年前の53.5%にまで減少した。茨城県の場合は、85市町村が44へと、51.8%に減少した。この間茨城県には12市が新たに誕生したが、これは全国都道府県の中での増加数トップである。この結果、県内の市の数は32となり、埼玉県、愛知県、千葉県、北海道、大阪府に次ぐ数になった。また、市の数の増加とともに、市の人口が県全体に占める割合は、90.5%となった。因みに、市の人口の割合は、全国でも90.6%と遂に90%の大台に乗ったし、関東地方全体では95.1%に達している。
 県内の各市町村の伸びを見ると、新しく誕生した守谷市つくばみらい市が16.3%、10.5%の増加を示し、次いでつくば市の7.0%増と続く。逆に減少の方を見ると、大子町の9.3%減、河内町の7.2%減となる。十王町との合併により一時20万人を超えていたはずの日立市の人口は19.3万人、前回比3.1%の減少で、残念ながら20万人を切ったままである。
 数字を挙げればキリがないが、全体の減少傾向の中で、首都圏中核部をはじめとする特定の地域に人口が集中する傾向がいよいよ強まって来たようであり、これからの本格的人口減少社会に向けて、我が国の総合的な国土政策の真摯な検討と展開が迫られているところだと思う。
(スペース・マガジン7月号所収)