題詠100首選歌集(その37)

          選歌集・その37


006:困(205〜229)
(丸井まき)事務長は困るという字をそのまんま貼り付けたような顔して辞める
011:ゲーム(178〜202)
佐藤紀子) ゲームしてなかなか負けてやらぬゆゑオジイチャン少し嫌はれてをり
(新藤ゆゆ) 携帯のゲームアプリの指示どおり舞うゆびさきに落ちる夕やけ
024:謝(128〜154)
(七十路ばばの独り言)天災に続く人災多くして謝罪の言葉がうつろに響く
025:ミステリー(127〜151)
(本間紫織) 解き明かす謎の数だけ深くなるミステリーなら君と堕ちたい
(我妻俊樹) 読みかけのトラベルミステリーにあふれてた夏の光をすれちがうバス
038:抱(85〜109)
(五十嵐きよみ) うわべだけ大人になって宿題を抱えたままでたそがれてゆく
(A.I) 椅子に似たひとに抱かれて背もたれに背骨のまろみそっと預ける
(湯山昌樹)赤ん坊を抱えるごとく 新しきラケットケースを持つ子らのあり
(久哲)酔漢が電信柱抱く夜の周囲ではじまりつつある真夏
040:伝(81〜105)
(五十嵐きよみ) 泣き顔が混じっていても幸福が伝わってくる家族の写真
ウクレレ) 伝えたい言葉をオブラートに包み生春巻きをゆっくりと食む
041:さっぱり(77〜101)
(史緒) さっぱりと髪を切る日の口紅は少し淡めのピンクを選ぶ
(五十嵐きよみ) 私にはさっぱりよさがわからない泣ける話が持てはやされる
(南葦太) 愛なんてさっぱりわからなかった と 落ちきっていく砂を見ている
(久哲)ぬけ殻をばりばり踏んでさっぱりとした青春を探す無駄足
042:至(76〜100)
(湯山昌樹)極端に梅雨入り早き今年なり 夏至にも気づかず過ぎてゆく日々
(南雲流水)急行に乗り継ぐ人を見送れば風が流れる夏至のホームへ
(東雲の月)葉を返し髪揺らし行く絹引きの風碧々と夏に至れる
051:漕(51〜75)
(青野ことり)どこからが夢だっただろう夕暮れの公園ひとり漕いだブランコ
052:芯(51〜75)
(コバライチ*キコ)己が身の芯まで冷えてうずくまるハナミズキ散る頃の淋しさ
(砂乃)ジャガイモが芯まで竹串通るほど煮えたらおしまい今日の後悔
(青野ことり)冬の日を思いだしてるやわらかいキャベツの芯を薄く切りつつ
(ちしゃ)床に転がるトイレットペーパーの芯に負けないほどの哀愁