市町村の二極分解(スペース・マガジン11月号)

 例によって、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。


       [愚想管見]   市町村の二極分解       西中眞二郎

 7月号に、昨年の国勢調査結果のサワリのサワリだけ書いたが、今日はその続きを書こうと思う。その際に書いたこととも関連するが、全国の人口が5年前に比べて0.2%増という微増の中で、大都市部の人口増加と町村部の人口減少という二極分解の印象を受けた。その中身を少し詳しく見てみよう。全国市町村を平成17年人口で、50万人、20万人、10万人、5万人、3万人、2万人、1万人、5千人、2千人で区切って、平成17年から22年への人口変化をそれぞれの人口階層別の合計で見ると、50万人以上の大都市(17年人口で28都市)が合計で2.8%、20万人〜50万人の中都市(同じく86都市)が合計で0.5%とそれぞれ増加しているのに対し、20万人未満の市町村の階層別合計は、すべて減少している。
 少々細かくなるが、人口20万人未満のそれぞれの階層別区分の合計人口の減少率を上記の区切りで順を追って列挙すると、0.1%、0.9%、2.3%、3.8%、4.6%、5.8%、7.7%、10.2%と、人口の多い方から少ない方へと見事に逓増している。これだけ綺麗なカーブを描いているケースも珍しい。要するに、全般的に見ると、大都市ほど人口が増加し、小さい町村ほど人口が減少して、「大きいものはますます大きく、小さいものはますます小さく」という傾向が顕著に表れているということだ。今後、人口減少社会を迎えるに当たり、この傾向がますます増大するのではないかということが危惧される。
 少し視点を変えて、人口減少市町村の比率を見てみよう。
 今回調査の全国1,728市町村の単位で、全国の人口減少市町村の割合を見て行くと、平成2年から7年にかけて52.7%、7年から12年にかけて62.3%、12年から17年にかけて69.6%であったのに対し、今回調査では実に76.4%の市町村の人口が減少している。特に、北海道、東北、四国の人口減少市町村の割合は、90%を超えている。また、秋田県は人口増の市町村はゼロであり、山形、福井、鳥取、山口、高知の5県の増加市町村数は、わずかに1となっている。
 関東地方の場合、平成初期には人口減少市町村の比率が20%程度と断然低く、ひとり勝ちの様相を示していたのだが、今回は56%の市町村の人口が減少しており、安閑としてはいられなくなった。このうち茨城県について見ると、平成2年から7年にかけて13.6%と低位にあった人口減少市町村の率が、7年から12年にかけて50%と急増し、12年から17年にかけては72.7%、今回調査では75%と更に増大して、全国合計とさほど違わない数値になってしまった。首都圏中核部への集中が続く反面、関東周辺部は他の地方とあまり違わない状況になっているようである。
 なお、今回の調査で人口減少市町村数が50%を下回るのは、東京都の25.0%を筆頭に、愛知県26.3%、神奈川県36.4%、沖縄県滋賀県、埼玉県の40%台の6都県に過ぎず、全般的な低迷の中で、特定の地域への集中が目立っている。
(先月末公表された22年調査の確報値によれば、7月号に書いたように我が国の総人口は微増したものの、日本人の人口に限れば0.3%減少しており、これは終戦直後の昭和20年という異常時を除き、国勢調査史上はじめてのことである。)
(スペース・マガジン11月号所収)