題詠100首・百人一首「あとの祭}

        題詠100首・百人一首「あとの祭」
 

 昨日12月4日のブログに、「題詠100首・百人一首」を載せた。結構苦労もしたが、何が出て来るかと思いつつの楽しい作業でもあった。皆様へのお詫びや釈明などは、その前々日2日のブログに書いているので、その繰返しは避けて、今日は、選定の終わったところでの感想や補足などを書くことにしたい。なお、ほとんどが去年書いたもの(昨年12月5日付け「あとの祭」)の焼き直しであることを、まずお断りしておきたい。
  

 出来上がったものを眺めて抱いた感想は、これまでと同様この題詠100首のレベルの高さである。選定の適・不適は別として、こうして眺めてみると、いずれも高いレベルの作品であり、しかも当然のことながらそれぞれの作者の持ち味が出ており、どこに出しても恥ずかしくない作品集だという気がしている。もっとも、今年はどちらかと言えば「無難」なものが多いのかなという気がしないでもない。全体としての作品の傾向なのか、それとも選者たる私の年齢のせいなのか、このあたりは良く判らない。


 作品の中には、テーマに絞りをかけたり、いろいろな趣向を凝らしたものも散見されたが、今年の作品で驚いたのは、100首すべてを、上から読んでも下から読んでも同じ「回文」で統一された作者がおられたことだ。選歌集でも10首以上採らせて頂いたが、この百人一首では056の「摘」がその回文作品である。1首だけでも大変なのに、100首すべてが回文というのは、想像を絶する話だ。なお、作者のお名前も回文になっているとお見受けした。この催しの趣旨に適っているのかどうかは知らないが、そのご苦労と素晴らしい才能には、ただただ感服するのみである。


 百人一首作成の過程について、例年通り少し御説明をしておこう。
 

 百人一首の前提として、選歌集を72回(去年は77回)にわたってブログに掲載した。この催しの全作品19,144首(去年は20,697首)(注:主催者ブログのトラックバック件数として記載された件数。二重投稿や誤投稿もあるので、実作品数はこれより数%少ないと思う。)のうち、選歌集に掲載した作品数は、2,491首(去年は3,184首)である。残念ながらいずれも去年を下回っている。
 先日前夜祭にも書いたように、「題詠100首」の性格上、百人一首は、完走された方に絞ったが、完走報告をされた142人(12月1日現在。去年は160人。私を含む。)のほか、完走されたにもかかわらず完走報告をされていない方6名も、私の勝手な判断で完走者として扱うことにした。以上合わせた完走者は148名となる。選歌集に載せた2,491首のうち以上の148名の作品は2,021首(去年は2,677首)であり、この2,021首を百人一首の選歌の対象とした。なお、私の作品は選歌集には入れていないが、選者の役得で補欠あるいはDHとして、百人一首の選考対象には潜り込ませて頂いた。
 
 
 この2,021首を作者別にカウントすると、
50首以上:2名 40首以上:3名 30首以上:10名 20首以上:21名 15首以上:14名 10首以上:34名  以上合計84名 となっている。昨年は13首以上の85名の方の作品を原則として選ばせて頂くという方針で作業したのだが、今年は一昨年以前に戻って、10首以上の方を優先して選定することにした。残りの16首はその他の完走者15名の方及び私の作品から選ばせて頂いた。結果としてその15名の方については、選歌数の比較的上位の方中心となった。選歌数10首に近い方からは、当然のことながら選ばれた方とそうでない方が生まれ、運不運(?)が分かれているが、作品自体の魅力に加え、作者と作品のマトリックスの関係もあり、この点はお許し願うしかあるまい。 
 

 マトリックスにつき、少し補足しよう。それぞれの題と作者からそれぞれ候補作を選び、その組合せを考えて行った。方法としては、一目惚れした作品をまず選び(これは極めて少数)、次いで比較的迷わずに選定できる題や作者(多くの場合、候補作の少ない題や作者)の作品を順次選ぶといった方法で、次第に絞って行った。
 一応出来上がった後で、入れなかった作品を見渡してみて、「これは是非入れたいな」と思うものも沢山あるのだが、それを入れると、既に入れたその方の作品を落とすことは当然として、その題のほかの方の作品も落とさなければならない。落とした方は他の題で入れなければならないし、その結果落ちる方がまた出て来る。その種の玉突き状態を繰り返していると収拾がつかなくなり、仮りに何とかなったとしてもどこかに無理が出て、全体として見れば、当初のものより出来の悪い結果になる可能性が大きい。とは言いつつも、なるべく満足できるものにしたいと思い、何度かの「玉突き」は行った。それにしても素晴らしい「玉」が漏れているケースも結構あると思うが、最後は、目をつぶって妥協せざるを得なかったという点はお許し頂きたい。
 

 先日も書いたように、選歌集自体全くの私の独断と気紛れの産物なのだが、それを母体とした「百人一首」も、その点では同様である。ただ、なるべくそれぞれの題のベストクラス(もちろん私の勝手な物差しによるものだが・・・)のものを、またそれぞれの作者のベストクラスのものを選びたいと思い、それなりに苦労もし、私の物差しからすればそこそこの選定はできたと思ってはいるのだが、果たして如何なものか。選ばれなかった方にとってはもとより、選ばれた方にも「自分のベストはこれではない」という御不満は残ると思うが、題と作者のマトリックスという難題に免じて、その点はお許し頂きたい。
 

 選定の準備段階として、選歌集を纏める都度、その作品をパソコンの「エクセル」に入れて整理していたのだが、これは最終段階の労力をかなり省いてくれた。最初の1年は普通の「ワード」で整理していたので、最終段階でかなり無駄な作業も必要になったが、2年目から少し智恵が付いて「エクセル」にしたため、題や作者別に整理し直し、見直すのが、随分楽になった。


 選歌集に載せた完走者の作品2,021首を、題別に見ると、次のような結果になっている。なお、当然のことながら、選歌の母体となった作品数は、題にかかわりなく完走者数(148人から私を除いた147人)と同じはずである。完走されなかった方を含む総投稿数は、当然のことながらはじめの方が多く、後の方ほど少ない(主催者のブログに表示されたトラックバックの件数レベルで、題001の投稿数315、題100の投稿数150)

<37>032:町 <35>009:寒<33>003:細<30>014:残
<29>068:コットン<28>005:姿・018:準備<27>001:初・008:下手<26>013:故・016:絹・059:騒・062:墓・063:丈・075:朱<25>007:耕・015:とりあえず・034:掃・069:箸
<24>010:駆・022:でたらめ・038:抱<23>002:幸・011:ゲーム・020:幻・021:洗・030:遅・033:奇跡・050:酒・056:摘・060:直・079:雑・087:閉<22>004:まさか・012:堅・017:失・047:態・048:束・067:励・071:謡・098:味<21>040:伝・041:さっぱり・042:至・044:護・055:虚・064:おやつ<20>029:公式・036:暑・039:庭・054:丼
<19>026:震・081:配<18>028:説・031:電・035:罪・058:帆・074:刃・078:卵・083:溝・086:貴・088:湧・092:念・100:完<17>019:層・023:蜂・025:ミステリー・037:ポーズ・045:幼稚・051:漕・061:有無・077:狂<16>006:困・024:謝・049:方法・052:芯・057:ライバル・076:ツリー・091:債・093:迫・094:裂・097:毎・099:惑<15>043:寿・065:羽・066:豚・072:汚・073:自然・080:結婚・095:遠慮
<14>027:水・046:奏・082:万・085:フルーツ<13>089:成・090:そもそも・096:取<12>053:なう・070:介・084:総


 以上、甚だ勝手な百人一首であり、独りよがりの感想だが、皆様に多少なりとも御評価頂ければ、まことにありがたいことである。来年も、喜寿が次第に近づいて来る私の気力と体力が続く限り、皆様にお目にかかれることを楽しみにしている。なお、これでこのブログ、短歌関係はしばらくお休みになるのだと思う。弁護士事務所ありキャバクラありの雑居ビルのようなブログだが、このブログもたまにはお覗き頂ければ幸甚である。それでは皆様、どうかお元気で新しい年をお迎え下さい。また来年お目にかかりましょう。


注:後の祭り(インターネットの「大辞林」より)
[1] 祭りの翌日、供え物を下げて飲食すること。後宴。[2]〔補説〕 祭りのすんだあとの山車(だし)の意から、時機を逸して甲斐のないこと。手遅れ。悔やんでも「後の祭り」だ。