題詠2012選歌集(その1)

 昨日私の投稿を010まで済ませたので、早速選歌に入ろうと思います。例年お断りしていることですが、何の権威もない勝手な選歌であり、ご不満の点もいろいろあろうかと思います。どうか私の遊びごころに免じてお許し頂きたいと存じます。
 在庫が25首以上貯まった題について選歌をし、それが10題貯まったら選歌集としてブログに載せるという方針は、従来通りです。なお、スタート時とゴール時は、その方針通りに進めることには難点もありますので、弾力的に扱って行く積りでおります。
 それでは皆様、これから長丁場ですが、よろしくお付合い下さい。終了時には、例年通り百人一首を作る積りです。


     選歌集その1

001:今(001〜070)
(風乃茉琴) 今どこと電話で聞かれ嘘を吐き花屋の花を眺めて泣いた
(平和也)今でこそ笑い話と振りかえる昔を持たぬ三十路の半ば
(ラヴェンダの風)こんこんと水湧く井戸のある家に大叔母住みし今市の里
(粉粧楼) 手の中の今川焼きは冷めてゆき人待つ午後はいつでもひとり
(中西なおみ) 今はまだ遠い春ですたんぽぽになりたがってた雪が降ります
(梅田啓子)今しがた帰り来たるや背戸きしむ音の聴こゆる如月の夜半
(夏実麦太朗)新聞が郵便受けに入る音ことり聞こえて今日は始まる
(みずき)今を急く時間(とき)も心も雪のなか白き夕べのなほ遙かなる
(小夜こなた) 今日までと明日からとが混じりあう風を見ていた君に抱かれて
002:隣(001〜058)
(紫苑)里やまに春の隣りの近ければ梢を透かすひかりやはらぐ
眞露)安酒の隣のこばち大根の 芯に沁みいる寄る辺なき夜
(ラヴェンダの風) 隣室の夫の起き出す気配して寒の極みの一日(ひとひ)始まる
(梅田啓子)凍てつける日本列島この朝は春隣(はるとなり)さえ冬のただなか
(湯山昌樹)隣家なる竹林より根を伸ばし我が畑にも筍生える
003:散(001〜051)
(ほたる)ためらわず今夜のうちに捨てましょう明日散るかもしれない花は
(太田槙子)散々な夢散々な今日だけどバイト先では適度に笑う
(南野耕平) 散らかった心の部屋の真ん中で清く正しく途方に暮れる
(庭鳥)冬枯れの木立を渡る北風が雪ん子の花散らしてまわる
(みずき)散る櫻(はな)のあはひに佇ちて翳みゆく調べのやうな宙の優しさ
(ラヴェンダの風) 山茶花の散り敷く庭をほんたうに好きと思ひしあの家あの日
(中西なおみ)あなたから生まれた音を折りたたみ散らばぬように包む手のひら
(梅田啓子) 散文に書かざることのふたつみつ韻律にのせひと息に詠む
004:果(001〜039)
(庭鳥) 果物のイラスト付きののど飴をみんなに配る氷張る朝
(みずき)果てしなき空の彼方にある未来 黒蝶の舞ふ夢を見てゐる
(芳立) 内蒙の果たての汽車に老爺より東京高師の日本語を聞く
005:点(001〜034)
(しま)見上げてもやっぱり冥い夜だから点をつないで乙女座とする
(こはぎ) 点と点結べば見えてくる君の心変わりを塗り潰す冬
(夏実麦太朗)太陽の黒点ふえてゆく春に笑いの止まらぬ夢を見ている
(ほたる) 人生の汚点と思える恋だってあの日は白いTシャツだった
(粉粧楼) 恋に似た重みの言葉にじみ出て句読点打つようにためらう
(庭鳥) お点前の話をふればお稽古のグチ流れ出す女子会の夜
(吉里) 点々と山の麓に灯る灯に笑いがありや涙がありや
(はこべ)点在すゆかりの場所は夢に見き宇治十条のそのままにあり
(芳立) ふゆごもり春のルージュはもえかけてまだ融点にとどかない君
006:時代(001〜027)
(ひじり純子)噛みしめて口ずさみたくなる年齢か 中島みゆきの「時代」と言う歌
(葵の助) 僕達の時代の音を閉じ込めて銀の円盤時空を超える