題詠2012選歌集(その10)

 大震災から早くも1年。月並みなセリフではあるが、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、少しでも早い復興と被害者の方々の生活の回復をお祈りしたい。


          選歌集・その10


007:驚(86〜111)
(希屋の浦) 驚いた素振り見せずに顔上げた恋はちょっぴり進展してる
(稲生あきら)たとえば明日世界の終わりが来たとしても、もう驚きはしないと思う。
(紗都子)驚いて振り向くときのまなざしにスライスされた歪なレモン
022:突然(26〜50)
(椋)突然の雨さえ心躍らせる 菜の花誘う庵への道
044:ドライ(1〜25)
(ほたる)さかさまに吊るされドライフラワーになれば愛してくれるでしょうか
(遥)色褪せて朽ち果てていく過程にも美しさありドライフラワー
045:罰(1〜25)
(シュンイチ) 読まないまま棚に並んだ「罪と罰」を読めない言いわけ考えている
(みずき) 「罪と罰」夜を徹して耽りしは現し世の波知らぬ若き日
(ほたる)天罰と感じるほどの寂しさに濡れても雨をいとしく思う
(空音)老いるのも罰なんだろうこの命果てる時まで女でいたい
046:犀(1〜25) 
(シュンイチ) ふるさとはとおくにありて犀星の詩集とともによみがえるもの
(紫苑)木犀のかをる夕べに抵抗と自由の詩を読みかへしつつ
(黒木うめ)三度目の正直として手に取った室生犀星幼年時代
(空音)雨の降る金木犀の薫る夜はひとりで濡らす冷えた指先
047:ふるさと(1〜25)
(夏実麦太朗) 寅さんはセピア色したふるさとを鞄に詰めて歩いています
(シュンイチ)ふるさとと呼べる場所などもうなくて切れた線路の上歩き出す
(蓮野 唯) 叶うなら貴方と共にある今を我が永遠のふるさととする
(映子) 父さんの 酒の肴はふるさとの   思い出話と おふくろの味
(こはぎ) ふるさとと呼ぶ違和感を面影も潰えた街で噛む昼下がり
(秋月あまね) 生まれても住んでもいない町のことふるさととしてプロフィールに書く
048:謎(1〜25)
(夏実麦太朗)知ったとて謎はその分ふえるから知らなくたって良いのだけれど
(黒木うめ) 謎もなくただただそこにいる君ときょうも一日仲良くします
049:敷(1〜25)
(平和也) 下敷きのアニメのキャラを書き写す午前一時の受験勉強
松木秀)寒い朝庭に敷き詰められていた雪も昼には解ける三月
(流川透明) ベッドには嘘の花びら敷き詰めて眠れぬ夜を数えています
050:活(1〜25)
(しま)漆黒の器にそっと静寂を活け直したいそんな夕暮れ
051:囲(1〜25)
(紫苑) 雪囲ひせし樹々の絵を添え来たる御文はつかに雪の匂ひす
(みずき)蜘蛛の囲に捲かれて黙す黒蝶の魂なるか夕星(ゆふづつ)の燃ゆ