題詠2012選歌集(その18)

           選歌集・その18

010:カード(106〜130) なし
016:力(79〜103) なし
017:従(77〜101)
(五十嵐きよみ)従順という花言葉もてあます桔梗の気分でため息をつく
(梅田啓子) 冷えしるき太極拳の教室に手に従いて足を踏みだす
018:希(76〜100)
(黒崎立体)いくつものかなしい石をつみあげて「希望みたい」とうそぶいている
(かげいぬ)少しずつ僕を混ぜてはみたけれど希釈されない君の成分
040:勉強(26〜50)
(廣珍堂)図書館の 勉強室は 相席で 女子高生は 春の吐息す
(槐)語らふも生きながらへる勉強と花影の下酔ひて歌へり
041:喫(26〜50)
(廣珍堂)ヤニ色の 喫煙ルームも 撤去され 玄関前に 立ちん坊がゐる
(コバライチ*キコ)例へれば檻の住人哀愁と意地の漂ふ喫煙ルーム
042:稲(26〜50)
(粉粧楼)無意識を貫いてゆく稲光恋に飲まれたあの夜のように
(猫丘ひこ乃)稲掛けの田んぼが続く町ゆけば祭支度のお囃子の音
043:輝(26〜50)
(佐藤満八) あのころの恋の形見に輝きをなくして黒いプラチナリング
(御子柴 楓子) 無知という無垢とはちがう輝きを備えたきみはある意味無敵
078:査(1〜25)
(横雲)ひとり来し秋の作品審査会紫苑群れ咲き君忘られず
(紫苑) 皺みたる山査子(さんざし)の実の酸き甘き綯ひ交ぜにしてひそと食みをり
(みずき) 診査する臓器の触るる脈動に耳透かしをり遠く雪降る
080:たわむれ(1〜25)
(紫苑) たはむれか黄金(こがね)の雨に身を浸すダナエの眠り安けからまし
(こはぎ)甘やかな言葉重ねてたわむれの恋はいびつに溶けたティラミス
(みずき) たはむれの恋に春雨降る朝へひとひら白き終止符の降る