題詠2012選歌集(その20)

                選歌集・その20


001:今(173〜197)
(ワンコ山田)もし出会うかたちを選びなおせても今の二人のこのもどかしさ
(miki)今という 時の流れの激しさに 留めおきたし3.11
009:程(109〜133)
(御子柴 楓子)頃合いを見計らってはわらってる空気が読める程にはおとな
(ワンコ山田)ある程度知ったかぶりができたってかしげてみせるためにある首
012:眉(106〜130)
(廣田)海沿いの街に名前を捨てた夏 ゆるい陽射しにただ眉を描く
(さくら♪)なんとなく大人の自分見せたくて眉をしかめる練習をする
(真桜)制服を仕舞って大人ぶってみる初めて眉を引いた三月
(RIN)通したき意地ある朝(あした)眉山は高し弓矢を引き絞る如(ごと)
(sei)やけくその思ひに眉を剃り落としきりりと太く描きなほしたり
013:逆(101〜125)
(磯野カヅオ)春めける毛足の長き絨毯を逆立てながら吉報を待つ
019:そっくり(79〜103)
(五十嵐きよみ)アルバムの中に私とそっくりな母の写った一枚がある
029:座(51〜75)
(希) どうだっていいと言い切れなくてつい射手座の恋愛運を見ている
(コバライチ*キコ)さりげなく隣に座る君の香の陽の匂いする図書室の午後
(七十路ばばの独り言)季節ごと座布団カバーを掛け替える桜の開花を待つ桜色
(小夜こなた)縁側に亡き方々が鎮座して笑いさざめく春の午睡に
(梅田啓子)大犬の陰嚢、仏の座が咲いていつもとおなじ春がきていた
(五十嵐きよみ)反論を言い出せなかった唇で星座の名前を読み上げてみる
030:敗(52〜76)
(コバライチ*キコ) 敗れてもなお向かいゆく蟷螂のカマ振り上げて宙を切りおり
(さくら♪)敗れても楽しかったと言う子らを違和感持ちて観る甲子園
(ゆら)戦いに破れた人にだけ笑んだ貴女の紅茶が濃くなりすぎる
085:甲(1〜25)
(紫苑)甲高き喇叭は光る粒子おび丸天井のいただきに果つ
(みずき)掌(て)の甲を翳せば白く影ろひて雪降るらしき雲の落ちくる
087:チャンス(1〜25)
(紫苑)ほの消ゆるワン・モア・チャンス暮れ方の桜木町に靄たちこむる
(みずき)あの夏のチャンスに賭けた一世(ひとよ)なれ 百合の木たかき空が恋しい
088:訂(1〜25)
(薫智)またひとつ終わった恋を弔った改訂される僕の自分史
(夏実麦太朗)全身に訂正印は押されててひとつひとつが思い出である
(シュンイチ)教科書は知らないうちに改訂をされて思い出またひとつ減る
(秋月あまね)駆除された語彙のことなど思いつつ改訂前の原書にあたる
松木秀)訂正はきかぬ題詠ブログなり恥ずかしきうた積み重ね来つ