題詠2012選歌集(その26)

選歌集・その26


009:程(134〜158)
(浅見塔子)程々にすると言いつつ消えていく梅酒を君の喉に見ている
今泉洋子) 新芽から葉へうつりゆく季(とき)の程指に確かめ畑に芹摘む
010:カード(131〜156)
(ぱぴこ)かつて住み暮らした町の行きつけのドラッグストアのポイントカード
(ゆり・くま)最強のカードがどれかわからずにやってるような人生ゲーム
016:力(104〜128)
(砂乃)力点を考えてないシーソーでどこまで空に近づけますか
027:損(76〜100)
(南野耕平)含み損かかえたような関係が織りなす色も人間の色
(nobu)損得で割り切れぬのは人生が偶数でなく奇数だからか
028:脂(76〜100)
(中西なおみ)光る川めぐってきたと思い出を語り始める鮭の脂身
佐藤紀子体脂肪率測定てきる体重計買ひて三年あまり使はず
037:牙(51〜75)
(猫丘ひこ乃)象ならば象牙が生えているところほうれい線に触れつつ想う
(廣田)ZIPPOのオイルは涸れて僕たちの牙も失われてゆく真夏
(梅田啓子)ごまかしや嘘がささえる日常と気づきたる今 牙もてあます
(七十路ばばの独り言)牙向ける人も場面も年ごとに少なくなりて後期高齢
(真桜)弱ってる時ほど甘く噛んでくる君の言葉は妖しき毒牙
(五十嵐きよみ)葡萄牙ポルトガル)、西班牙(スペイン) イベリア半島に二本の牙が並んで生える
(穂ノ木芽央)朧月眺むることもなきままに煙管くはへてすすむ猪牙舟
039:蹴(51〜75)
(本間紫織)青空を蹴り上げたくて漕いでいたブランコ きっとみんな正しい
(原田 町)石蹴りの陣地を描きしはこのあたり高速道路に空塞がれて
(廣田)約束の日はこともなく過ぎ去りぬ 錆びた空き缶蹴り上げて、雨
(真桜)ため息を付いて蹴飛ばす石ころに「ばか」と呟き君に背向ける
(五十嵐きよみ)思いきり蹴る必要はないんだというかのゴールがあっさり決まる
(青野ことり)白々と雲はひろがり梅雨入りも間近と思う 石ころを蹴る
040:勉強(51〜75)
(原田 町)お値段は勉強します愛想良き家具屋呉服屋いまはシャッター
(じゃみぃ)勉強をしたと思えば安いもの酒と女と美味しい話
(小夜こなた)セシウムやベクレルの文字見つけては想定外の勉強つづく
(五十嵐きよみ) 勉強を投げ出したくなる青空が窓の向こうに広がっている
059:貝(26〜50)
(アンタレス)波さりて濡れし砂浜に何処から薄紅色の桜貝あり
(円)痛い傷抱いた貝が全て丸い真珠を吐いて眠れますよう
(猫丘ひこ乃)ムール貝のスープを飲めば吾の中に小さくエーゲ海が生まれる
(粉粧楼)病める貝だけが真珠を抱けるから傷つき堕ちる夜もあっていい
(コバライチ*キコ)硝子器に閉じ込められし桜貝海の記憶をつぶやいており
060:プレゼント(26〜50)
(たつかわ梨凰)プレゼント選んで帰るショーウィンドウ斜めに夕陽が差し込んでいる
(アンタレス)暖かくなったら何処でも押してくよ孫の一言嬉しプレゼント
(粉粧楼)言葉など無くていいから終わらない朝だけひとつプレゼントして