題詠2012選歌集(その31)

選歌集・その31


002:隣(185〜209)
(ぱぴこ)顔を見て言わせてほしい自転車のスピードあげて隣に並ぶ
(星川郁乃)あのころのあなたが聴いていた曲で鳴る隣席のひとの携帯
007:驚(162〜186)
(柳めぐみ)触れられるたびに小さく驚いて静かに積もる9年目の日々
(葉月きらら)繋がれた手に驚いてみせたのも計算でした高いヒールも
(つばめ)「驚かすつもりはないが実は僕、野田内閣を支持しています」
(ちょこま)真夏日に立つひまわりはいっせいに驚いたまま空を見つめる
025:触(102〜126)
(砂乃)触れたなら崩れてしまう予感あり 告白できぬ君は「友達」
(フユ)満月に触れられそうだね この夜のはしごにのぼってきみに手を振る
026:シャワー(101〜125)
(葉月きらら)傷ついたことも涙も消せるはず少し熱めのシャワーを浴びて
(稲生あきら)生ぬるいシャワーで汗を流しても昨夜の夢のあとが消えない
(柳めぐみ)下心。それだけ。感じやすい部位はごまかしながらシャワーで流す
(黒崎立体)なかなおり斜めに見てる目の端でちぎれたままのシャワーカーテン
033:滝(79〜103)
佐藤紀子)ナイアガラのホテルの浅き眠りには滝の轟く音が入りくる
034:聞(78〜102)
(nobu)聞き耳を立てる気配を感じてか急に電話の声が低まる
(砂乃)月食は月からこぼれた相聞歌 しまいこんでた返歌を探す
(やや)聞きなれた音色が消えてしまうから再生ボタンくり返し押す
051:囲(51〜75)
(畠山拓郎)ちょっとだけ囲みを解いて出方見る大坂城はこの夏燃える
(梅田啓子)フラ踊る少女を囲みカメラマン腰のうごきにシャッターを切る
佐藤紀子)新聞の隅の小さな囲み記事 あなたが昨日逝きしを伝ふ
(磯野カヅオ)次こそが終の棲家と思ひつつまた引つ越しの荷に囲まるる
053:渋(52〜77)
(すずめ) ご都合と大義名分ない混ぜで民に苦渋を強いる理不尽
(五十嵐きよみ)朝刊をたたんで飲み干す日本茶の頑固な父を思わす渋さ
071:籠(26〜50)
(廣珍堂)ほの暗き 旅籠の部屋は 語りだす 十年前の 逢瀬の行方
074:無精(26〜50)
(空音)二日目の朝は貴方の無精髭その頬ずりの愛しき痛み
(原田 町)几帳面なきみに無精のわれがいて波風たたず来たりし不思議