題詠100首選歌集(その36)

選歌集・その36


006:時代(180〜204)
(ちょこま) やなことをぜんぶ時代のせいにした今朝はラインがうまく引けない
(ゆいこ)教室のしなびたピアノで友の弾く少年時代が生んだはつなつ
029:座(101〜125)
(じゃこ)寝るために買ったソファーに座らせた客の話がとても眠たい
042:稲(76〜100)
(由弥子)早稲の香の夏座敷にもとどきけり簾のおくの白き座布団
(るいぼす)強風にさらされ心が荒む夜 稲穂色したセーターを編む
044:ドライ(76〜100)
(磯野カヅオ) 亡き人の横で役所の手続きとドライアイスの値引き求むる
(砂乃)朝もやに月と一緒に溶けだしたヘッドライトは静かに消える
045:罰(76〜100)
(フユ)罰として校庭にある捨てられた夢物語を掃きあつめてる
(吾妻誠一)髪切れば罰ゲームかと囁かれ気圧変化に頭が重い
(中西なおみ)罰として粉々になるかなしみの言葉を包む白い消しゴム
(さくら♪)遠足のバス間違えた担任に野次飛び拍手「はい!罰ゲーム!」
065:酢(51〜76)
(コバライチ*キコ)酢酸の匂い懐かし理科室のフラスコの瓶人体模型
(磯野カヅオ)酢漿草の蔓延るがまま野を広げ皺ひとつない駅員のシャツ
(しま)甘酢漬けそっと盛りつつ思い出をかき集めたりしている夕べ
081:秋(26〜51)
(アンタレス)母娘での気侭なる旅思いたち秋の修善寺いで湯にあそぶ
(柳めぐみ)ユニクロの店先はもうカーディガン 秋はあなたと何を話そう
082:苔(26〜50)
(コバライチ*キコ)古刹にて苔むす五百羅漢像目元口元笑うて在す
087:チャンス(26〜50)
(アンタレス)籠る身は庭の草木に誘われて動くもの待つシャッターチャンス
(コバライチ*キコ)横切りしチャンスの女神の前髪を掴み損ねし夏が遠のく
(槐)キッチンの覗きし笑顔艶めけりシャッターチャンスはお預けにせむ
088:訂(26〜50)
(コバライチ*キコ)若き日に紐解きし書の改訂版別の顔して書店に並ぶ