題詠100首選歌集(その38)

選歌集・その38


001:今(223〜247)
(なまにく)今日が晴れ 明日が雨なら 明後日は私が虹になって消えたい
(由布子)妹のために絶望せず生きるこんなことしか今はできない
(桑原憂太郎)今までの我の軌跡もゴミ箱のワンクリックであつさりと消える
(高良すな)今帰仁の城への道 北風にかん寒緋桜が春をまぜ込む
(anemone)満たされるときは来ないと判っても今はあなたの声を追わせて
(星桔梗)笑いつつ今が総てという君の病名教えないでください
005:点(189〜213)
(なまにく) 点線で切り離そうか 曖昧になりつつあった二人の境
(桑原憂太郎)7%の節電掲げ間引きさる蛍光灯に点されて居る
020:劇(128〜153)
(壬生キヨム)新月の夜のみ開く劇場に恋を忘れるために通いぬ
(さとうはな)降りしきる夏の言葉に覆われて円形劇場朝もやの中
(出雲もこみ)観客は一人もいない交差点演者犇めく渋谷劇場
(まつたけ)悲劇さえ人が楽しむためにあることを思えば演じきるまで
047:ふるさと(77〜101)
(砂乃)夏雲に宣戦布告し咲いているヒマワリの待つ僕のふるさと
(さくら♪)ふるさとはここだよと言う友がいて別れの言葉飲みこんだ春
(音波)ふるさとの匂いが嫌い写真館にまだ飾ってる写真も嫌い
050:活(76〜100)
(たえなかすず)活躍をしてねその後は順調に挫折をしてね、応援してる。...
(なまにく)生活に必要の無い物だけで埋まった部屋は居心地が良い
067:鎖(51〜76)
(梅田啓子)こころを鎖し生き来しひとの唇はたとえば糸切り鋏のうすさ
(湯山昌樹)公園の鎖をまたいで歩み入る 夏の日 結界を越えるごとく
佐藤紀子)海風になびきて軽しエルメスの鎖模様の青いスカーフ
069:カレー(52〜76)
(しま)ふるさとは心の隅にいつもあるカレーの味と母の笑顔と
(小夜こなた)おもむろにカレーうどんを啜りつつ君と迎える炎天の朝
(秋)どろどろのカレーの中の人参に少し同情する昼日中
089:喪(26〜52)
(円)勇敢な夏の青さえ褪せていく喪うことが怖い夕焼け
(原田 町)一月に死んだ義兄の喪中かと年賀ハガキ買うをためらう
091:締(26〜50)
(熊野ぱく)会議中瞼を閉じて議論から締めだされてる快感を得る
(東 徹也)胸元を締めつけていくすれ違いもう十分に地球は廻った
(コバライチ*キコ)締めきつた部屋の隅から微かなる虫の音聞こゆ夏の終わりに
093:条件(26〜50)
(円)わたくしである条件すらも溶けていく青い空には空だけがある