題詠100首選歌集(その40)

選歌集・その40

051:囲(76〜100)
(中西なおみ)囲まれてしゃがんだままで黙ってる少女いつから名前がないの
052:世話(76〜100)
(柳めぐみ)先生が私と会ってくれるのを世話浄瑠璃を読みながら待つ
(青野ことり)世話好きなおばさんがいて良縁がきょうも舞い込む夢をみていた
053:渋(78〜102) なし
072:狭(51〜75)
(なまにく)二人では狭かった部屋 その隅に掃き残されたほこりが私
(しま)持て余す孤独にちょうどよい部屋の狭さに憩う夏の黄昏
077:転(51〜75)
(由子)転落とふことをうべなひ詠いきるホームレス歌人公田耕一
(しま)寝転んで見上げた空は透き通るほどに愁える五月の青で
(梅田啓子)団塊の世代のしっぽに連なりて転校生のままに年経る
(七十路ばばの独り言)転宗の証しの踏み絵思わせる離党の意志の個別確認
(み)この星の自転は速すぎると思う時間はさみしすぎると思う
(tafots)しろたえのパニエを見せて回転す 少女はとわに少女でいない
佐藤紀子)真東に日の昇り来る秋彼岸 自転・公転狂ふことなく
(はぼき)禍いが転じて福となるまでにあとどのくらいかかるのだろう
079:帯(51〜75) 
(七十路ばばの独り言)花火見に出かける孫の背に揺れるチョウチョ結びのしごきの帯が
(砂乃)腹帯をくるくる解いてまんまるなわたしのたまごに夫が触れる
(五十嵐きよみ)ときどきは知らない作家の本を買う帯の言葉に心惹かれて
092:童(26〜50)
(中村成志)入り口に童子(わらし)がいます七つだけ灯のある窓を持つホテルには
(真桜)向日葵と背比べする童女らの眩しさは陽のためのみならず
094:担(26〜50)
(中村成志)両肩に担う荷物の少なさがかなしくなってしまったら老い
(原田 町)光熱費の負担ふえても原発をゼロにすべきかミンミン蝉よ
095:樹(26〜50)
(熊野ぱく)人生の終わりを覚悟せぬままに樹海の底を散歩している
(新井蜜)椎の木の大樹のごとき銀色の夢から覚めたそれが三月
(原田 町) 樹液吸いにクワガタ来るを待っていたあの日の森に子らと帰らん
096:拭(26〜50)
(原田 町)清拭をすませし母は棺のなか唇にほんのり紅さしやりて