題詠100首選歌集(その50)

選歌集・その50

013:逆(178〜202)
(紗都子)逆上がりする昼さがり雨あがり虹をくぐって地球にもどる
(青山みのり)知りたくて逆引きすれど腑に落ちる言葉へたどりつけぬ曇天
014:偉(179〜203)
(青山みのり)偉いとはほめられずとも壊さぬよう朝な朝なに焼く目玉焼き
(黒崎聡美)こどもらの声を遠くにきいている書架の下段に『世界偉人伝』
051:囲(101〜125)
今泉洋子)君に会ふ睦月いよいよ近づきぬその日は朱きハートで囲む
(黒崎聡美)とりどりの単行本に囲まれて地上五階の本屋のあかるさ
053:渋(103〜127)
(三沢左右)少女にも似合う渋さがあるという ペットボトルのはじめひと口
(津野)去るならば少し気持ちが残る日に渋味の残る紅茶飲み干す
(黒崎聡美) 渋滞はテールランプを滲ませてきみとの距離をとおのかせている
054:武(101〜125)
(音波)読みさしの武者小路の『友情』は片付けないで連絡を待つ
077:転(76〜100)
(穂ノ木芽央)暗転に衣のすべる音のして次なる君は菩薩か夜叉か
(白亜)波寄れば浮輪ひとつが転びをり 夏の終はりのゆるやかなこと
(ワンコ山田)よく転ぶよく蹴躓くその度に誰かの腕を期待する癖
(南野耕平)母通う転倒予防教室は生徒3人先生5人
080:たわむれ(76〜100)  なし
097:尾(51〜75)
(もふ)スーパーに二尾の香魚を眺めいる日々に旅することもかなわず
(村田馨)なにげない夜が気になることもある尾張屋橋から見る横浜(ハマ)の街
(ワンコ山田)来世では犬に生まれて出逢いたい私は尻尾を千切れるほどに
098:激(53〜77)
佐藤紀子) 夜半すぎて激しさを増す雨音を聞きつつ友に詫び状を書く
(七十路ばばの独り言)激しさを見かけの微笑で繕って暮らした日々に倦んで一服
100:先(51〜75)
(七十路ばばの独り言)先生と呼ばれた日々が脳底に潜むか夢に教案立ており
(南野耕平)旅先の小さな街ですれちがうことがあったら微笑みあおう
(白亜)たやすくは先を語らぬひととゐて海に入りゆく落日を見る