題詠100首選歌集(その62〜65)

 通常ペースの選歌集は昨日で終わり、以下は在庫25首以上という「基準」から外れた題の選歌である。あまり多くなってもお読みになりにくいかも知れないし、私も出来たものから早く掲載して行きたいので、以下いくつかに分けて整理したいと思う。出来れば今日中に終えたいと思うが、あるいは落穂拾いの完了は、明日に掛かるかも知れない(→今日中に完了しました。)。最後の宿題の百人一首はその後になる。


          選歌集・その62(題001〜020)

002:隣(236〜254)
(青山みのり)間引き菜を刻むとなりにいさかいの名残りのような闇の立ちおり
(伊織)つい煮物作りすぎちゃいたいようなお隣さんを待っている春
(ひいらぎ)今だれの隣にいるの聞けなくてぎゅっと握った携帯電話
003:散(231〜253)
(飯田和馬)その家の子が会釈して出て行った散髪される鏡の僕に
(久野はすみ)龍角散のふたをあければふうわりと古里にふる雪のやさしさ
(jun)風吹けば震えるような音が散るポプラはいつも追いかけて来る
005:点(240〜242)
(ちょろ玉)得点を認めなかったレフリーの背骨がピンと伸びる一月
007:驚(212〜230)
(藤崎しづく)驚いたくらいでぎゅっと抱きついて甘えてしまうわたしでいたい
008:深(208〜227)
(伊織)深ければなおさら愛し寝息ごと貴方をくるむ繭でありたい
(藤崎しづく) 霧深くペガサスの角さがしてる世界はまるで剥がれた林檎
009:程(209〜221)
(久哲)程々に組み立てられた日替わりの定食に付く頭文字A
(小倉るい)雨降れば傘を投げ捨て濡れながらいっしょに歩く程度の男
010:カード(207〜224)
(ネコノカナエ)バスカード買い足しました盛岡は今日も雨ですもうすぐ冬です
011:揃(202〜220)
(裕季)お揃いのシャツの2人の似顔絵が今も変わらぬお守りになる
(久哲)ピンヒール揃い踏みして軽やかに傷つけてゆく冬のうわづら
012:眉(207〜221)
(久哲)思い出に駆け込みましょう描くほど不揃いになる眉を開いて 
(ちょろ玉)ああこんな場所にもあった砂浜で君が眉間に寄せるしあわせ
013:逆(203〜215)
(ちょろ玉)逆さまに映した世界夕暮れの空へふたりで落ちたかったね
014:偉(204〜212)
(藤崎しづく)偉くてもいいし偉くなくてもいいポテトサラダをきれいにつぶす
015:図書(201〜209)
(藤崎しづく)文部省推薦図書のようにする恋をまひるの夢と名付ける
(田中ましろ)カーテンをくぐってやわらかくなった風 図書館が深海のよう
017:従(178〜199)
(裕希)言われてもただ従うのが嫌だからあれやこれやと理屈をつける
018:希(202〜205)
(ちょろ玉)流れ星のような角度で降らせなさい希望の「希」という字の一画目
020:劇(180〜196)
(久野はすみ)笑わないあまたの首をしまうゆえ人形劇団倉庫は優し

選歌した作品のない題 001:今(273〜275 )004:果(242〜244) 006:時代(230〜233)  019:そっくり(181〜196)
残りの作品のない題 016:力



        選歌集・その63(題021〜040)


022:突然(177〜187)
(藤崎しづく)おそ咲きの花弁はいつも突然にとじる あなたを置き去りにして
024:玩(178〜182)
(jun)動かない分かってるけど捨てられない玩具の箱が押し入れにある
026:シャワー(177〜183)
(風歯市 平)プール用シャワーの中で踏んだ虹 実によくある夏の日のこと
028:脂(151〜174)
(ちょろ玉)筋肉が脂肪に変わっていく日々を他人のような顔で見ている
029:座(152〜174)
(ひいらぎ)縁側で座布団並べお茶を飲むような普通が一番欲しい
(新藤ゆゆ)からっぽの座席にのこる体温がさめないようにショパンを流す
(小倉るい)満員の座席に揺られ発つ君の短き髪がいとほしかりき
(ちょろ玉)「座」の文字を眺めてごらん「座」の文字が笑った顔に見えてくるまで
032:詰(151〜166)
(Jingo)詰所前で目覚めぬ父を待つ叔父とぼんやり語る汐の満ち干き
033:滝(154〜166)
(如月綾)極寒の滝に打たれて修行する気持ちで小言を聞き流してる
034:聞(153〜165)
(浅見塔子)虫の声聞こえなくても秋が来て冬になります都会のふしぎ
(如月綾)鈍感なほうが幸せらしいから何も聞こえてない振りをする
035:むしろ(152〜166)
(久野はすみ) 青山のみのり豊けきこけむしろ美しきかな先をゆく人
036:右(152〜162)
(久野はすみ)嵐電(らんでん)に乗りてゆきたし冬ざるる京都右京区太秦の寺
038:的(151〜161)
(久野はすみ) 恣意的な解釈ばかりきかされて明け方甘きコーンポタージュ 
039:蹴(151〜163)
(壬生キヨム)寝不足を言い訳にして青い空 好きなおとこのうわばきを蹴る
040:勉強(151〜162)
(如月綾) (勉強は嫌いじゃなかった 学生じゃなくなってから気付いたけれど

選歌した作品のない題 021:示(178〜188)  023:必(181〜189)  025:触(177〜184) 031:大人(151〜166) 037:牙 (151〜162)
残りの作品のない題 
027:損  030:敗  



           選歌集・その64(題041〜060)

042:稲(152〜160)
(久野はすみ)ままごとの終わりをつげる声がしたお稲荷さんの鳥居のむこう
(高良すな)雲間から刹那に見える稲妻を雨の報せと布団取り込む
046:犀(151〜157)
(ちょろ玉)金木犀の「犀」という字はちょび髭のキングみたいな顔をしている
047:ふるさと(153〜159)
(久哲)ふるさとで買っても常に北を指す方位磁石がとても冷たい
(浅見塔子)まだ祖父がいた頃私のふるさとは僅かに煙草の匂いがしました
(ちょろ玉)折り鶴を折り目ただしくほどきゆく遠きふるさと思い出しつつ
048:謎(151〜161)
(久野はすみ)訊ねたいことの多くは謎のままサイドミラーの角度を直す
(如月綾)謎ときをしようか あの日偶然にあの公園で出逢ったことの
052:世話(151〜159)
(ひろ子)夫(つま)と歩む弥次喜多道中この後(のち)も大きなお世話と小さな遠慮
056:晩(127〜149)
(青山みのり)ほおずきの赤にこころを惹かれつつ切り捨てたれば晩鐘の鳴る
(ネコノカナエ)「お晩です」を照れずに言えるこの頃ですまだ雪かきは得意じゃないけど
(鮎美)晩酌の刺身を作る母も老ひそを猫にやる父も老ひたり
(田中ましろ)晩酌をふたりのためにする日にもちいさな棘が抜けないでいる
(矢野理々座)暗転し幕間に舞台変わるよにただ銀世界 昨晩の雪
057:紐(127〜147)
(さくら♪)実習のエプロン紐の縦結びかわいらしくて黙って見てる
(ネコノカナエ)盛岡の短い夏の夜を抱く八月四日の腰紐といて
(風橋 平)転ばない意志また決めてしゃがむ手にスケート靴の硬い靴紐
059:貝(126〜149)
(青山みのり)巻き貝のように淋しい言い訳をくちずさみつつ下ろすファスナー
(さくら♪)この夏の風と笑顔と桜貝みんなで詰めたタイムカプセル
(久野はすみ)貝印カミソリいつもしまわれて鏡台は母のしずかな浜辺
(矢野理々座)貝殻がもしも貨幣であったなら宝塚市になる貝塚市.

選歌した作品のない題 041:喫(151〜163) 043:輝(153〜165) 044:
ドライ(151〜159) 045:罰(153〜159) 049:敷(153〜159)
050:活(151〜159) 051:囲(152) 053:渋(154・155) 054:武(152) 055:きっと(152) 058:涙(151)
残りの作品のない題 060:プレゼント 


選歌集・その65(題061〜100・これにて選歌完了)

061:企(126〜148)
(小倉るい)みえすいた企みに乗り海へ行く砂を抱きいる半都会人
062:軸(126〜148)
(鮎美)床の間の天神様の掛軸を仕舞ひて我が家の正月終はる
063:久しぶり(128〜147)
(藤崎しづく)髪型を変えたメイクもかえてみた久しぶりっていうときのため
(久野はすみ)久しぶりに帯を締めれば母よりも叔母に似ておりわたしの肩は
064:志(127〜145)
(ちょろ玉)志望校に入れなかった苦しみを数式のなかに燃やす五限目
066:息(127〜146)
(飯田彩乃)冬の景嵌め込まれたる硝子窓をふたりの息で湿らせてゆく
(久野はすみ)フルートは春楡の枝みずみずと息ふきこめば青葉がゆれる 
067:鎖(127〜142)
(鮎美)ダニューブの川面にブダとペストとを結ぶ光の鎖揺れつつ
068:巨(128〜146)
(田中ましろ)耐えていたことが過ち いつからか巨大になったあなたを畳む
069:カレー(127〜141)
(壬生キヨム)一晩中一緒にいたのに夜明け前おまえのカレーが食べたいという
071:籠(127〜144)
(鮎美)今は亡き祖母の背支へ歩みたり木虫籠の美しき城下町
072:狭(126〜139)
(鮎美)永遠の一分足らずを黙したり狭きエレベーターにあなたと
073:庫(126〜142)
(田中ましろ)開いたら二度ともとには戻せない書庫に眠っている物語
074:無精(129〜149)
(久野はすみ)ひだまりにただ撫でられているだけの無精な猫となりたき土曜
(ちょろ玉)先生もすっかり無精ひげを剃りぼくたちだけが知る夏休み
075:溶(128〜137)
(やや)角砂糖溶かすつかの間人生はこんなものかもしれぬと思う
076:桃(127〜140)
(壬生キヨム)桃色の便せん選ぶ結局は机にしまっておくだけのため
077:転(127〜136)
(ちょろ玉)君の背に向けたことばが全力で走って転ぶまでを見ていた
(莢豆)昨日までをつめたキャリーを転がして家出の如く家帰りつく
079:帯(126〜141)
(久野はすみ)幾たびも結ばれたるをおしまいにいっそう強く結ぶ帯締め
(風橋 平)悪口を吐き捨て終へてなほ黙る沈黙のあり 携帯を閉づ
(やや)ノクターン奏でる指のささやきをト音記号帯締めて聴く
(鮎美)卒業式母は着物で現れぬいつか形見になる帯締め
080:たわむれ(127〜137)
(風橋 平)たわむれであるかないかのせとぎわでかげろうすけるみをかさねゆく
(矢野理々座)日なたぼっこしながら猫とたわむれて今日も一日しあわせでした.
081:秋(127〜136)
(高良すな) 夕暮に秋津飛び交うキビ畑 白穂も翅も緋色に染まる
(やや)気配だけ残すあなたのやさしさはパステルカラーの秋の花束
(鮎美)人生の秋豊かなれ両親の鉄道旅行の写真の増ゑて
082:苔(130〜133)
(鮎美)休職も三ヶ月目の同僚のデスクの苔玉乾ききつたり
084:西洋(126〜135)
(やや)孤独には慣れておりますいつだって目を開けたままの西洋人形
086:片(128〜132)
(矢野理々座)片方の手にはあなたがくれた傘 だから私は雨の日が好き
087:チャンス(112〜132)
(飯田彩乃)チャンスにも神様はいて今ごろは敗者に酒を奢らせている
088:訂(132〜136)
(久哲)折々の世相に合わせ妖怪の改訂版が出てくる夜道
092:童(129〜131)
(矢野理々座) 童謡はむしろ年老いてからの方が心にしみるのはなぜだろう


選歌した作品のない題 065:酢(128〜146) 078:査(129〜133)  083:邪(128〜137)  085:甲(128〜132) 090:舌(129〜133) 091:締(130〜133) 093:条件(129〜132)
残りの作品のない題  070:芸   089:喪  094:担  095:樹  096:拭  097:尾098:激  099:趣  100:先