数字の読み方

          数字の読み方


 元日の朝日新聞1面に、「原発近くの住民への国給付金・辞退、福島事故後に倍増」との記事が出ていた。
 原発事故の後の脱原発の流れにつれて、地元給付金を辞退する地元住民が倍増したことは事実のようだが、その内容をよく読むと、給付対象103万件に対して、辞退数が80〜90件から171件に倍増したということのようだ。比率で言えば、0.008%から0.017%への増加である。
 たしかに「倍増」には違いないが、もともとの数が余りにも小さく、数理的にどこまで意味のある数字と言ってよいのかどうか、よく判らない。たとえば、100万件のうち1件が5件に増えたからといって、これを「5倍増」と言ったのでは、読み手をミスリードするのではないか。もっとも、それが人命にかかわるような類の話であれば、そのような取り上げ方があながち不適切とも言い切れないような気もする。
 低レベルの放射線被曝による罹病率などもそうだと思うが、この種の極めて低い比率の数字の「大幅な増加」をどのように表現すべきなのか。私自身確たる答は持っていないのだが、少なくとも「倍増」といった表現を見出しで安易に使うのには、違和感を抱く場合も多い。