題詠100首選歌集(その5)

          選歌集・その5


001:新(81〜105)
(守宮やもり)新しい一日だから新しいストッキングに秘密を詰めた
(まつしま)新しいページを開くときめきが消え入りそうで春に背いた
011:習(27〜51)
(ひろ子)自習帳関数グラフの右横にアンパンマンは笑ってをりぬ
(コバライチ*キコ)庭先の「手習いどころ」の看板が春待ち顔で日向ぼこする
(こはぎ)学習をしているようでしてなくてまた似たような恋ばかり踏む
(夏樹かのこ)習いごと漬けの鞄をからっぽにして朝焼けを詰め込んでやる
012:わずか(26〜50)
(紫苑)部屋べやの時計のわづかづつ狂ふこのあいまいな瞬間を生く
(不孤不思議)新聞の集金員となりし妻 健康となりわずかに稼ぐ
(湯山昌樹)大いなる夢とわずかな金を持ち都会の学府へ行く教え子よ.
(コバライチ*キコ)例えればわずか二ミリの違いさえ許しがたくて空を仰ぐ日
(あわい)指先に灯るわずかなぬくもりがあなたを偲ぶよすがとなりぬ
013:極(26〜50)
(原田 町)杉花粉PM25春風は迷惑至極なものを乗せくる
014:更(26〜51)
(ひろ子)前髪を切りて再び踏み出せりインド更紗の裾ひるがへし
(船坂真桜)つく判の新しき名も軽やかに更新するは通帳二冊
021:仲(〜25)
(シュンイチ)仲直りした日の夕焼けのことを今でも思い出せるのはなぜ
(莢)星ぼしが仲違いする夜なので子猫も鳥もおもてを見ない
022:梨(〜25)
(キョースケ)梨をむくきみの手しろし微笑みの中にあるのは別れの予感
(こはぎ)触れられたところから崩れてしまう西洋梨としていま眠る
(穂ノ木芽央)ひときれの梨のごときかなげやりにあなたがくれし甘きうるほひ
023:不思議(〜25)
(莢)渡る鳥だけが不思議と知覚する郷愁に似た風の信号
(美穂)わたしとは違う人類氷上で跳んで回って踊れる不思議
024:妙(〜25)
(砂乃)巧妙に罠を仕掛けた合コンでひとりぼっちのイイヒト候補
(西村湯呑)泣きながら「元気もりもり定食」を食べてる人が妙に気になる
(こすぎ)ふっとした微妙な間での一言がほわんとしてた友を亡くした
(遥)わたしの気持ち察するように絶妙な手紙が届く愛されている
(はこべ)浄妙寺冬陽のなかに蝋梅が香っておりぬ鎌倉五山
025:滅(〜25)
(遥)滅亡の始まりなのか核というパンドラの箱開けた我らの
(美穂)滅入る夜に君も眺めているだろう月を浮べて酒を飲み干す