題詠100首選歌集(その7)

やっと「その7」まで来たが、去年よりは随分遅れている。去年の場合、4月中旬に「その17」に届いているし、題を見ると「第79」まで来ている。ランナーの方々のペースがこれから上がって行くことを期待するのみだ。


          選歌集・その7 

004:やがて(78〜102)
(美亜)傷付いてないふりをするあのひとをやがて忘れるまでのひととき
(山本左足)やがて来る本番のため何回も君の寝顔に告げるさよなら
005:叫(76〜100)
(まつしま)陽光の降る庭先に小さなる叫びざわめく啓蟄の朝
(五十嵐きよみ)泣き叫ぶ代わりに歌うオフィーリア両手いっぱい花を抱えて
017:彼(26〜50)
(不孤不思議)湧き水に馬と並びて水を飲む峠はすでに彼誰の時
(ひろ子)無念にも彼岸へ渡りし友をれば「死にたい」などと意地でも言はぬ
018:闘(26〜50)
(コバライチ*キコ)闘鶏を見守る男の浅黒き肌光りおりバンコクの朝
(原田 町)暖かくなればスギナやヤブカラシ草との闘い果てしもあらず
(松浦可音)ゆっくりと闘いかたを忘れてくあなたを梳かすゆびがほつれる
(椋)ためらいと闘う一瞬ドアノブに 伸ばした指先微かに揺れる
019:同じ(26〜50)
(桃子)同じ道通ってみたのに会えなくて ちょっとしょんぼりかたばみの花
(芳立)わが胸をつきぬけ君は八月の檜の森と同じ目の色
(あわい)夢の中君の隣に立っていて同じ歌だけ繰り返す夜
(ひろ子)同じ空見上げる者を告げるやう桜前線馳せ参じたり
020:嘆(26〜50)
(光本博)感嘆符つけるでもなき日常に饂飩三玉買ひ忘れたり!
佐藤紀子)陶器市の皿に嘆息洩らしたり値札に並ぶ0の数ほど
021:仲(26〜50)
(コバライチ*キコ)煩わし事次つぎと押し寄せる日の夕暮れは杜仲茶を飲む
(ひろ子)喧嘩して割れたる皿にあることば「仲良きことは美しき哉
(あわい)あのひとの近くで恋など知らぬふり悪い仲間の顔をしていた
(周凍)妹背とてあそびすさびし仲なりきおじゃみおはじきふたりあやとり
032:猛(〜25)
(みずき)猛暑日も足裏冷ゆると亡き母の呟いてをり風鈴の鳴る
033:夏(〜25)
(藻上旅人)夏が過ぎ秋風がふく頃となりやっと寂しいことに気づいた
(映子)朝顔の浴衣で黒い下駄履いて駆けて転んだあの夏祭り
(みずき)さよならも言はず別れし面影へ激しき夏のページ閉ぢたる
(浅草大将)あの夏の光ばかりを焼きつけて古き写真はセピアに褪せず
(紫苑)日々草しをれて落ちぬをとめごの捨つるものあり晩夏ひと日に
(さわか)大好きな土地の匂いにむせ返る目蒲線には夏の思い出
(はこべ)夏を待つひまわりの種もらいきて蒔く日をえらぶ陽だまりのなか
(桃子)藤棚で棒アイスなどなめながら 君と笑いころげたあの夏
(船坂真桜)夏の色映す付箋の枚数は君の残した「好き」とイコール
034:勢(〜25)
(浅草大将)暮れなづむ伊勢の島じま神さびて天つち分かぬ時し思ほゆ
(美穂)勢いをつけて私が幻のぶらんこを漕ぐ真昼の野原
(桃子)青空を映しはじめた水たまり 勢いつけて少年が飛ぶ