題詠100首選歌集(その18)

            選歌集・その18


001:新(131〜155)なし
011:習(77〜101)
(風橋 平)学習帳撫でつつおもふこの名前書くことさへも真剣だつた
012:わずか(76〜100)
(葵の助)ただいまも言わずからだを抱き寄せて悔やむ2時間前のあやまち
(由子)わずかなる残像を追い北品川 亡き父ゆきし居酒屋「保志乃」
022:梨(51〜75)
(じゃこ)話すことないけど梨を食べながらふたりしゃりしゃり会話している
083:霞(〜26)
(西村湯呑)この胸のイタイのイタイの飛んでいけ 遠くのお山が涙で霞む
(こすぎ)その椅子に座っていた女性(ひと)いなくなり霞みががってく記憶の欠片
(みずき)春霞む野辺のほとりの石佛に魂ほどの陽炎のたつ
(女郎花)朝霞 海を睨んで立ち並ぶガントリー・クレイン朱色を濃くす
084:左(〜26)
(葵の助)雨のたび左肩だけ濡れているユイの頭上の傘は日替わり
085:歯(〜25)
(美穂)下の歯が生えてきたよとメールあり何度も添付の画像をひらく
086:ぼんやり(〜25)
(映子)新しい季節がやって来るたびにぼんやりだけど「生きる」を思う
(紫苑)さまよへる夜ごとの影をかたはらにコンビニの灯のぼんやりと照る
(横雲)二人してぼんやり過ごす年の明け寡婦めく母の老いゆくをみる
(砂乃)真夜中にぼんやり滲む月を見て今日の残業終わりを告げる
(美穂)ぼんやりとわたしのことなど想い出す人もいるかもしれない月夜
(周凍)たそかれのすだく蛍にまじらはでうらぼんやりと影ひとつ見ゆ
(女郎花)歳月はふたりの上に降り積もり皺んだ五体ぼんやり浮かぶ
087:餅(〜25)
(映子)ひび割れた餅にうっすら青かびの浮いた時代も悪くはないね
(紫苑)いはひごととはほど遠き厨べに月餅ひとつもてあましをり
(美穂)一歳の誕生餅を背負わせておとな六人子を泣かせおり
(橋田 蕗)新年を祝うひかりよ床の間の白磁の餅が耀いており
099:文(〜25)
(藻上旅人)文届く元気に暮らしていますよとただそれだけを記す文届く
(西村湯呑)恋文をちぎって撒いたあの場所ではじけるように咲く福寿草
(桃子)そういえば君の文字って初めてで 妙にうれしい賀状の返事
(お気楽堂)馬鹿にする文句ひときわ冴えわたる禁煙による禁断症状