題詠100首選歌集(その19)

       選歌集・その19


023:不思議(51〜75)
(山本左足)霊長類ヒト科のなかでただひとり君でなければならない不思議
ウクレレ)偶然を全部重ねてぶっちゃけて地球は不思議 まるくおさまる
(守宮やもり)どうしても君を目で追う 16は海が満ち引きするような不思議
048:アルプス(26〜50)
(コバライチ*キコ)空に近き南アルプスの頂にアンモナイトの眠る夕暮れ
049:括(26〜50)
(ひじり純子)建前をコメント欄に書き入れて本音は括弧の中で思えり
(鈴木麦太朗)なまぬるい缶コーヒーは切なくて泣の一字を括弧に入れる
050:互(26〜51)
(原田 町)お互いの健康法を競いあい昔女子会やっとおひらき
(鈴木麦太朗)お互いに出不精ですねと言い合うよ缶コーヒーと缶ビールとは
088:弱(〜25)
(紫苑)ひとたびは世のすゑを視し弱法師の目を閉ざしけりふたたびの修羅
(みずき)脆弱な心に棲まふ鬼のゐて激する夜の姿かたどる
(砂乃)弱者にはなりたくないと最初から強気でしゃべる人の殖えたり
089:出口(〜25)
(桃子)出口なき迷路でひとり立ちすくむ 友達以上恋人未満
(砂乃)トンネルの出口は見えず水仙のかおりの告げる春の訪れ
(矢野理々座)投票所出口調査に初遭遇 2票投じた気分になった
(女郎花)愛憎の出口なき闇狂えとぞ御息所わが裡に棲む
(鈴木麦太朗)焦げ付いた色した町の出口から缶コーヒーの缶が出てくる
090:唯(〜25)
(紫苑)うつくしき谷間の百合を語りあふ唯物論をうしろ手にして
(みずき)唯物に徹する君の傍にゐて雪降るなかの私の孤独
(はこべ)その日にも唯物論を唱えしは若き日のきみただなつかしく
091:鯨(〜25)
(橋田 蕗)鯨とうニックネームをくれた人逝きてふたたびこでまりの咲く
092:局(〜25)
(美穂)局地的に大雨になると予報士は占い師に似た口調で語る
093:ドア(〜25)
(砂乃)会議室 人事部長のドア越しの会話が気になる春はこれから
(橋田 蕗)子がねだるごとき目をしてあけてみる展示新車の助手席のドア
(葵の助)ドア越しの会話の果てに遠ざかる足音そして今からが夜