題詠100首選歌集(その22)

          選歌集・その22


016:仕事(77〜101)
(美亜)決められた仕事をこなしてゆくように君の別れを受け入れていく
027:コメント(51〜75)
(山本左足)本音とはまるで異なるコメントを笑顔で言えるほどには大人
(五十嵐きよみ)コメントをしたりされたりオペラファン同士ブログでゆるくつながる
(鈴木麦太朗)缶コーヒーただでもらった街角で超うまかったとコメントを書く
(千束)コメントに滲みだしてる嫉妬とか見てないふりしてストローかじる
029:逃(52〜77)
(五十嵐きよみ)追えば逃げ時には不意にやってくる恋は気ままな野の鳥だから
(大島幸子)ゆらゆらと追いかけるほど遠ざかるあなたはまるで逃げ水のよう
(miki)老いの身に 酷暑の夏の逃げ場なく 首に額に保冷剤巻く
030:財(51〜75)
(はぼき)財布には個性が出ると聞かされてのぞいてみればレシートばかり
(五十嵐きよみ)楽しみにしていたオペラを見る夜は散財してもいいことにする
031:はずれ(51〜75)
(はぼき)「ルートからはずれました」と言われてもぜひに寄りたい良い店がある
(大島幸子)くじ運が無いと嘆いて同情を誘う狙いもはずれてひとり
057:衰(26〜50)
(原田 町)足腰の衰えあれどともかくも白神山地歩いてきたり
(たえなかすず)自転車を西へ飛ばせばゆうぐれの速度がじょじょに衰えてゆく
(湯山昌樹)タンブラーに盛り上がる泡 衰える頃合いを見てコーラ飲み干す
(槐)夜の果てて萎えし哀しみ握りしめ行方定めぬ闇に惑へり
058:秀(26〜50)
(原田 町)光秀の謀反心は疲れから『安土往還記』ひさびさに詠む
(千束)Tシャツが背中に張り付く熱帯夜秀でることの重だるさ説く
059:永遠(26〜50)
(葵の助)一瞬を永遠にするシャッターの前では笑う嘘つき夫婦
(たえなかすず)「永遠」とにぎった手のひとあっさりとタクシーに乗り熱き夏去る
060:何(26〜51)
(橋田 蕗)何をするわけでもなくてただじっと見ているだけの月のかたむき
(莢)笹の葉が風を姿に変えていく 何時しか低くなった軒先
(鈴木麦太朗)缶コーヒー何の話をしてるのかほどよく冷えた自販機のなか
(コバライチ*キコ)「酷暑です。ご機嫌如何」と恩師より便り来りて今日原爆忌
065:投(26〜50)
(橋田 蕗)ほそ筒の青磁に母の好きだったアザミ投げ入れ風とおす部屋
(女郎花)投函口の蛙あまりに可愛ゆくて瞳にみどり焼き付け帰る
(梅田啓子)投げやりな母を見しこと一度だけ 「バナナを十本食べて死にたい」
(槐)水きりの川面に投げし石の果て色なき風に秋茜飛ぶ