題詠100首選歌集(その33)

 終盤近くなって、投稿のペースも少し上がって来たようで、ややほっとしているところだ。百人一首が何とか作れるくらいには増えて欲しいものだが・・・。
 なお、この数日来触れている私のパソコンのメールの話、どうやら元に戻ったようで、とりあえず一安心だ。しかし、まだ「病み上がり」のメールだから、いつおかしくなるか不安は拭い切れない。


        選歌集・その33


015:吐(101〜125)
(さゆ)嘘吐きの他愛ない嘘、見抜けないふりをしている平穏な午後
(鮎美)みづからの顔見つめつつ呪詛を吐くオフィスレディのお化粧直し
034:勢(77〜101)
(黒崎聡美)店員の恋の話が満ちてきて勢いで買う雪見だいふく
(村木美月)太陽が勢いのいい「おはよう」を届けてくれる長月の朝
(三沢左右)勢力の強き台風吹く町の図書館の書庫しんと眠れる
(美亜)大勢が勝手気ままにしゃべりだす世界の端で歌を詠む夜
035:後悔(76〜100)
真魚)後悔はしないと決めてまた今日も後悔しつつ渋茶飲んでる
(白亜)後悔を落ち葉のあいだに折りたたむ(形をなくすころに会おうね)
(村木美月)海風はもう肌寒い焼けた肌後悔しつつ秋服纏う
(三沢左右)明日にはきっと後悔するだろう かばんに花を挿したまま行く
(美亜)後悔は絶対しないと決めたから代わりに君を忘れて眠る
037:恨(76〜100)
(村木美月)プラチナが光る指先躊躇して恨めないまま握り返した
ウクレレ)なにごとかを恨んでるごと雨が降りボリューム上げるユーミンの曲
039:銃(76〜100)
(守宮やもり)銃は花 戦車は森になるとして 子供はうたえ 鳥のごとくに
(村木美月)眠ってるあなたの胸に押しあてた人差し指で作る銃口
ウクレレ)秋空の四隅を銃でうち付けて運動会の日は晴天で
040: 誇(76〜100)
(とおと)咲き誇る花と見紛ふ やはらかき拒絶を纏ひ張れる乳ふさ
(守宮やもり)すばらしく誇張されてる表現で涙のわけが説明される
(美亜)注目が欲しくて誇張を繰り返し話のオチがあまりに遠い
067:闇(52〜76)
(槐)夕闇に別れの影の融け行けば朧に浮かぶ細き月影
(牧童)暗闇にカサブランカの匂いして 突然光る携帯電話
(とおと)忘れゐしあまたの声のきれぎれに暗闇坂に朽葉降り頻く
093:ドア(26〜50)
(ひじり純子)ドアノブの汚れたカバーうら悲し最上階の西端の部屋
(由子)ドア開ける客人きょうはなけれども酔いつつ作る料理が楽し
(原田 町)萩の花コスモス咲いてようやくに秋へのドアが開く心地す
(芳立)夜明けまで閉ざしておかうドア越しにたたずむ君が消えないやうに
(諏訪淑美)ドア叩く音の気配に目覚めたり一人留守居の午睡は浅し
佐藤紀子)重きドア支へてくれる人ありて労はられゐる我と思へり
(湯山昌樹)自動でないドアの手前で立ち止まりしばし黙考することがあり
094:衆(26〜50)
(三沢左右)群衆の上に降る花はらはらと俯ける人なき春日中
099:文(26〜50)
(葵の助)文鎮を「ペーパーウェイト」と洒落込めばひやりきらりとガラスのイルカ
(梅田啓子)ためらひの傷のごときが残りゐき最後の文のさいごの行に
(海)不器用な手書きの文字にパソコンの中のあなたがリアルになりぬ
(三沢左右)縦書きの文字を指もてなぞりつつ書読む父の目元涼やか