題詠100首選歌集(その37)

考えてみれば、締切まで余すところあと1日。この分だと、完走者が100人に達するかどうか、少々心細くなって来た。その場合に恒例の「百人一首」をどうやって作れば良いのか、例えば第90まで走った人を対象とするのか等々、いずれにせよ、結果が出てから思案するしかあるまい。
 今日あたり、選歌集がもう一つ作れるくらいの投稿が集まることも期待できるので、もしそうなれば、夜にでも選歌集を追加することになるのかも知れない。(15時08分記)→どうやら今夜のところは、追加の10題は貯まりそうにない。明日以降に回すことにしたい。(22時14分記)

    

       選歌集・その37


041:カステラ(79〜103)
(白亜)読みかけの手紙のようなひとに会う午後はカステラひと箱買おう
(村木美月)今日あったつまらないこと話したい君とカステラほおばりながら
(miki)ほんのりと甘い郷愁カステラに 重ねて偲ぶ母の面影
(ちょろ玉)カステラに入れるナイフのやさしさであなたの頬のくぼみにふれる
(青山みのり)なつかしい木漏れ日がみえかくれしてカステラ一番電話は二番
043:慣(77〜102)
(村木美月)泣きそうな夜に限っていないひと受身の愛に慣らされていく
(とおと)慣れあひてやがて鈍りし指先をふふませ合へば時雨るる長夜
(今泉洋子)わが味に慣れさせるまで二十年だしを利かせてガメ煮を作る
(辺波悠詠)習うより慣れろと何十万回と書いてこの手に馴染んだ名前
(青山みのり)年をとることにも慣れて雨の降りはじめの音にやさしさを聴く
045:喋(77〜101)
(kei)ただ喋るだけで芸だと勘違いしている声が流れるテレビ
(村木美月)お喋りなすずめのように群がって同窓会を開きませんか
(今泉洋子)ほとんどの樹が御喋りをしなくなり枯野にひびくふたりの会話
ウクレレ)喋るのは得意ではなくひっそりと気配を消すのが上手になった
(ワンコ山田)いつもよりお喋りな柄のハンカチで今日の無口な私を飾る 
(桔梗)少女たちのお喋りは蝶 かろやかに花と花とを渡り歩いて
048:アルプス(76〜100)
(白亜)ゑまひとはちひさき泉 アルプスに春の名をもつ花の多かり
今泉洋子)アルプスのハイジは永遠(とは)に幼くてあのスキップの真似をしてみる
(ちょろ玉)手遊びのアルプス一万尺のやり方を覚えられない幼児期だった
083:霞(53〜78)
(三沢左右)土香る野にちらちらとコスモスの花霞ませて夕時雨ふる
(青野ことり)あたたかな朝に辺りを霞ませてきのうのことは忘れてもいい
(白亜)朧月 霞める空の真中にて花の吐息をそつとひろへり
ウクレレ)フリックやタップで頬を撫でられてスマホの顔が指紋で霞む
(今泉洋子)太るから霞を食ふといふ友のひとみの中の冴ゆる冬空
088:弱(51〜77)
(ちょろ玉)弱小のチームばかりに所属して時々呼ばれている「キャプテン」
089:出口(51〜76)
(三沢左右)放課後の光と闇の境ひ目はたとへば南校舎の出口
(椋)改札の出口に君の姿待ち 何度も髪を手で整える
ウクレレ)ある意味で出口はきっと入口でぼくらは迷うことが楽しい
090:唯(51〜76)
(青野ことり)どこかでは始まりどこかで終わるだろう 唯一無二の命がきょうも
(津野桂)唯一度激しく泣けば地下鉄の窓に最後の雪がまた積む
ウクレレ)唯一のチャンスに靴の紐ほどけ君は人混みのなかに溶け込む
092:局(51〜75)
(ちょろ玉)ひとつひとつの手紙が春であるとして郵便局から広がる匂い
(辺波悠詠)街角の郵便局で空色の便箋を買う少女の瞳
095:例(51〜75)
(湯山昌樹)例題に同僚の名をお借りして さあ生徒たち テストはこれから
(光本博)うしろめたき思ひを残し今週も例のごとくの休日となる
ウクレレ)例年に比べて寒い冬が来て種火のような恋がはじまる
(白亜)さみどりのインクでうつす例文の句点に芽ばえる5月の薫り
(村木美月)例題に躓いたまま本題に入る僕らの未熟さ甘さ