題詠100首選歌集(その38&39)

 いよいよ最終日。ほとんど1日出掛けていたので、これから残りの選歌をしなければならない。10題という選歌集の単位は、あと1つか2つくらいにはなるのだろうが、どうせ今日中に全部浚い尽くすことは無理だろうから、やれるところまでやって、後は明日任せにしようかと思っている。(20:34記)→結局その39まで今日の部に載せることにした。(23:36記)

         選歌集・その38


046:間(77〜101)
(三沢左右)仄暗き駐輪場の隙間より黒猫ひとつ駆け出しにけり
(由弥子)雨の間に君が通りし裏道は海の香立ちて冬門を閉ず
049:括(76〜100)
(村木美月)髪の毛を束ねるように切なさをひと括りして見上げる夜空
050:互(77〜102)
ウクレレ)お互いの気持ちがずれて夕暮れの赤と黒とを見ていたあの日
(三沢左右)息詰めて互に頬に触れをれば腕時計の針こつこつと鳴る
051:般(76〜100)
(美亜)意見など持たないままでとりあえず一般論の正義をかざす
(青山みのり)般若にも神にもなれず片頬に斜陽をのせて帰路をたどりぬ
053:受(76〜100)
今泉洋子)受付の笑顔もさまになりしころわがアルバイト期間も終はる
(三沢左右)散り狂ふ花びらを受け止めながら川辺に凛と朽つる自転車
(青山みのり)受け皿になれない僕はここにいてながれるみずをみつめるばかり
055:駄目(76〜101)
今泉洋子)駄目なもの駄目と言へないこの性(さが)が子供も猫も駄目にしてゐる
(ろくもじ)会うたびに駄目さが増える人がいて安堵に包まれている会場
(miki)今想う 駄目なら駄目とはっきりと言わずに逝った 母の優しさ
091:鯨(51〜75)
(津野桂)公園の鯨は砂に埋もれて砂の潮吹く風はむらさき
(青野ことり)冬を待つひだまりにいて夢心地 鯨くらいののどかさがいい
(村木美月)青空に浮かんだ鯨追いかけてジブリの森に迷い込みたし
093:ドア(51〜75)
ウクレレ)もし仮にどこでもドアがあるならばどこでもドアのある場所へ行く
(槐)寄り添へるふたり迎ゆるドアマンの笑顔に返す午後のはにかみ
(村木美月)ドアノブの冷たさ部屋の静けさに泣き出しそうな夜が始まる
094:衆(51〜76) なし
096:季節(51〜75)
(津野桂)季節ごと歌をうたいて幼子の髪は次第に強(こわ)くなりゆく
(翔子)黒枠のはがき舞い込む季節には裏作物の豆の花咲く
(たえなかすず)色づくとするなら淡い青でしょう 恋の頭上を吹く季節風



 今日も終わりが近い。25首以上貯まった題は8題にしかならなかったが、残りは明日に回すとして、その39までまとめて載せておくことにした。(23:36記)



       選歌集・その39


018:闘(101〜126)
今泉洋子)結婚は闘争なりと詠みし友寡婦となりしが久しく会はず
020:嘆(101〜126)
(ワンコ山田)ちっぽけな嘆き突き上げ作り出す落ちてけ私の位置エネルギー    
(久野はすみ)がま口をパチンととじて嘆くのが得意な母よゆっくり老いよ
054:商(77〜101) 
(村木美月)この町の商店街も寂れてく昭和の匂い残したままで
(ちょろ玉)商店街のその瞬間を切り取ればまだ生きている我の昭和は
(綾倉由紀)わりきれぬ思いを商とよぶべきかあまりに積もりゆくことばかり
(泳二)青春はメンチカツだと思ってる商店街に育った君は
(裕季)「ショッピングモール」にはない懐かしさ「商店街」のレトロな響き
059: 永遠(76〜100)
(とおと)永遠に変はらぬものを欲るごとく無月の夜の舞踏はつづく
(三沢左右)永遠に分かり合えない人がいて微笑む前に両目を瞑る
097:証(51〜86)
(大島幸子)気持ちとは移ろいやすいナマモノで品質保証いたしかねます
(泳二)押しピンで卒業証書を貼りつけろ明日には出ていく部屋の壁
098:濁(51〜85)
ウクレレ)怪獣の名に欠かせない濁音のゴジラガメラ、バルタン星人
099:文(51〜87)
(ちょろ玉)恋文を千切っていけば諸手からほろほろこぼれてゆくクリスマス
(辺波悠詠)君が書く小文字のエルの真ん中に糸を通して首に飾ろう
(光本博)予備校の日本史講師あらはれぬ土屋文明と検索すれば
ウクレレ)飛ばされることのないよう書き初めの勇気の文字に文鎮を置く
100:止(51〜84)
(ちょろ玉)我の知らない我になりたしゆうぐれのたとえば誰かの波止場としての
(椋)街路樹の舞い散る落ち葉に歩を止めて 君と出会った春の日想う
(光本博)休日の図書館通ひ止めしのちカメラ二台を購ひにけり