題詠100首選歌集(その3)

          選歌集・その3


005:返事(041〜066)
(@貴)すべてもう雪のせゐにす返事なき夜も前髪の決まらぬ朝も
(五十嵐きよみ)無視すればいいのに返事をしてしまい苦い思いでネットを閉じる
(諏訪淑美)お返事をなさいと言われた孫息子アッカンベーして駆け去りゆきぬ
(湯山昌樹)青空を贈った君はコバルトの海を返事に僕にくれたね
(由子)曖昧な返事にてなお加速する空回りなるセールストーク
006:員(043〜067)
(@貴)不採用うけとむる帰路のりあはす満員電車も縁とおもへり
(諏訪淑美)いじめとは思わなかったでもいつも員数外が立ち位置だった
(虫武一俊)みぞおちに社員証揺れるそれだけのことがこんなに遠い真昼だ
(紙屑)擦り切れた会員証の裏側でひどくやつれた名前が揺れる
(キョースケ)事務員のおじさん語る怪談も旧校舎とともに消え去る
007:快(042〜066)
(五十嵐きよみ)快晴の日ばかりではない人生にそれでも今日は虹がかかった
(原田 町)完治とは言いがたいがとりあえず快気祝いの品を選びぬ
(小春まりか)特急と普通しかない四国です快速の位置付けを教えて
(湯山昌樹)「快速」の響きが好きで急行を一本見送り快速に乗る
016:捜(001〜027)
(シュンイチ)捜してたものはいつでも見えなくて手さぐりのまま進む思春期
017:サービス(001〜025)
(ほし)おめでたうと言ふタイミングをはかりたりキャンドルサービス近づいてくる
(葵の助)褒め言葉すべてがリップサービスというわけでもなくココアは温い(ぬくい)
(ひじり純子)さまざまな旅の途中を切り取ってサービスエリアでコーヒーを飲む
018:援(001〜025)
(辺波悠詠)援助という優しい言葉がこの街でいつも未来を食い潰してる
(ほし)あいさつを誰ともしらずかはしたり援農ボランティアの青年と
(映子)閉会の言葉と共に応援の声は消えゆく白線残し
019:妹(001〜025)
(ひじり純子)年老いた母の口癖かるい呪縛「たった二人の姉妹だから」と
020:央(001〜025)
(紫苑)夜のあひを中央線のわたるとき落日はそのいろを増したり
(美穂)中央の一段高き台に立つために生まれし人の名は「真央」
021:折(001〜025)
(辺波悠詠)折り返し電話をするという君が私をここに閉じ込めている
(ほし)江ノ電の車内に小(ち)さき折畳み自転車海の光を浴びぬ
(文乃)折り鶴を何度折っても少しだけ崩れてしまうくちばしの先
(葉月きらら)淋しさは時折鬼を連れてくる私の中に住む天邪鬼
(@貴)感傷の糸につるせる折り鶴のひとつをほどく再入院日
022:関東(001〜025)
(葵の助)関東に育ち丸餅・味噌・小豆 雑煮分布図見るのも楽し
(映子)浜松を過ぎた辺りでもう一度「関東踏むぞ」の息を吐き切る
(西村湯呑)いろいろと宇宙の事情で怪獣は関東にだけ上陸します