題詠100首選歌集(その5)

<ご存じない方のために時折書いている注釈> 
 題詠100首というイベント(五十嵐きよみさんという歌人の方が主催しておられるネット短歌の会)に参加している。2月から11月までの期間に、題の順に各自が投稿するというシステムである。私も参加して10年目になるのだが、例年通り、私の投稿が済んだ題につき勝手な選歌を進め、終わったところで百人一首を作ることにしたいと思っている。全くの気まぐれで、何の権威もない無責任な選歌だが、私の遊び心に免じてお赦し頂きたいと思う。対象が25首以上貯まった題から選歌し、それが10題貯まったら選歌集として掲載するという原則にしている。(題の後の数字は、主催者のブログにトラックバックの件数として表示されている数字なのだが、誤投稿や2重投稿もあるので、必ずしも正確な投稿数とは限らない。)                

          選歌集・その5


002:飲(65〜89)
(横雲)酔ふほどに飲中八仙友とすもいよよ冴えたり憂ひ消(け)ぬまま
(小原更子)ふくらみてしぼむ風船もう乳を飲ませることのない乳ふさよ
010:倒(37〜61)
(たえなかすず)立ってするキスから倒れこむまでのほんの十秒樹々の音する
(キョースケ)雪溶けて新芽吹き出す倒木に春の夜の月柔らかく照る
(五十嵐きよみ)ブラインドの羽根を倒せば洞窟を漂う小舟めく午後の部屋
011:錆(31〜56) 
(諏訪淑美)感性が錆びるのは嫌と呟いて古包丁の赤錆研いでる
(原田 町)遺伝子の組換え種かも錆色のビオラ・パンジー植えて楽しむ
(梅里松庵)錆びついてゐるといふより段取りのととのはぬままの面接をはる
(永乃ゆち)錆びついた鉄棒に触れ少年は永遠などはない事を知る
(小原更子)あの夏に西瓜を切りし包丁が錆びついている西日の窓辺
012:延(31〜55)
(原田 町)炬燵にて延々テレビ見続ける膝の痛さを言い訳にして
(五十嵐きよみ)ともだちの延長上で結婚しいまだに名字で呼び合っている
013:実(30〜54)
(諏訪淑美)常よりは花付き多い白梅に実の豊穣を夢想している
(梅里松庵)枸杞(クコ)の実をすくはぬやうに食べすすむ粥の残りは少なくなりぬ
027:炎(1〜25)
(紫苑)くちなはの舌にやあらむ真夜ふかくねむれる街を炎の染むる
(映子)会えばまた終わったはずの物語りちろと音立て炎は蒼く
030:噴(1〜25)
(美穂)噴水を見た日の午後は透明な色をさがして絵の具を混ぜる
031:栗(1〜25)
(紫苑)みそかごとひとつ生まれぬ宵闇に匂ひまされる栗花のした
(天野うずめ)名も知らぬ親戚たちに囲まれて栗きんとんを無言で食べる
(文乃)庭に埋めた団栗三つ芽を出して二度目の秋へ歩み始める
034:由(1〜25)
(美穂)退会に特に理由はないけれどそれだと先に進めぬ仕組み
(@貴)クリミアの天使なるらし自由とふ意義さへしらず小夜になく鳥
(西村湯呑)理由なんて無いただ由のでっぱりを持ってぶんぶん回したいだけ
039:鮭(1〜25)
(秋月あまね)甘言に惑わされるなというような顔をしている鮭の骸は
(ひじり純子)母親と「おとなのおんな」の会話して鮭の半身をもらって帰る