安保法制懇報告は無価値(朝日新聞「声」)

 今日5月15日の朝日新聞朝刊東京本社版に、私の投稿が掲載されたので転載する。内容や表現は、タイトルを含め編集段階で一部修正されており、いささか意に沿わない点もあるが、掲載されたものをそのまま転載する。
 実は、掲載されるとしても報告書の公表後になるだろうと思い、その積りで「見込み記事」として投稿したのだが、昨日昼前にファックスしたところ、昼過ぎに「明日掲載」との電話が掛かって来た。これまで「声」には10回以上掲載されたことがあるのだが、概ね2,3日後に、「4,5日後に掲載される」との連絡があるのが普通だったので、実は少々驚いた。
 もう一つ蛇足を言えば、7年前の2007年4月29日、安保法制懇のスタートに際して同じ「声」に掲載された私の投稿(同日の当ブログに転載)と、かなりの点で共通の内容を含んでいる。考えようによっては二番煎じなのかも知れないが、スタートとゴールで首尾一貫していると評価できるのかも知れない。


        法的裏付けない安保法制懇
           無職  西中 眞二郎 (東京都 76)

 安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)による報告書の要旨が判明した。集団的自衛権の行使は、憲法9条の定める「必要最小限度」の自衛権の範囲内とする内容のようだ。
 安倍政権は、これを契機として集団的自衛権の行使容認に向けて走り出すのだろうが、報告書にそれだけの価値があるとは思えない。安保法制懇は、首相の私的諮問機関に過ぎず、法的に裏付けられたものではない。委員も首相と方向が同じ人ばかりを集めた、いわば「安倍さんに知恵を付けるための家庭教師の会」だ。中核テーマが憲法解釈であるにもかかわらず、憲法学者が少ないのも奇妙だ。
 報告書では、これまでの憲法解釈を実情に合わないと切り捨て、一方的な政策論を訴えている。首相は「集団的自衛権」を持ち出さなくても済むような事例を出して「容認」に道を開き、それを突破口に今後の拡大を狙っているように見える。
 政権の狙いに乗せられることのないよう、安保法制懇の報告書が権威あるものと錯覚せぬようにしたい。「初めから結論が見えている安倍さんの私的な勉強会」という原点を忘れずに対応して行くことが肝要だ。