題詠100首選歌集(その17)

          選歌集・その17

022:関東(51〜75)
(月夜野みかん)関東の雨が着くのを待っている あなたを濡らしたものに濡れたい
(お気楽堂)音消えし真夜は穢れを知らぬかに関東地方大雪警報
025:がっかり(51〜75) 
(お気楽堂)そもそもの生まれからしてがっかりな娘なんだし出奔もする
(ハナ象)約束とがっかりは相似形だから緑の紙に名前を書こう
(海)まだわたし希望を捨ててないみたいこのずっしりとしたがっかりは
046:賛(26〜50)
(ハナ象)夏服のキミに賛成完璧にみだらなシャツの裾出し加減
(湯山昌樹)全員の賛成にてことを決めるとはかえって不気味な気がしてならぬ
048:センター(26〜50)
(お気楽堂)信号もセンターラインもハンドルを握るあなたも霧にとけゆく
(はぼき)新聞にセンター試験問題と解答が出て春はもうすぐ
(有櫛由之)淡路島モンキーセンター頂に漢(をとこ)あり選挙に拠らずも猛し
(コバライチ*キコ)センター街と名のつく通りの賑わいに置いてけぼりの心がひとつ
049:岬(26〜50)
(梅田啓子)男の子あらば竜飛岬とおなじ名を付けたかりしと言う人ありき
(お気楽堂)はつなつの岬で空へ言挙げす青いドレスは風をはらみて
(中西なおみ) すりきれた踵の靴を投げだして駆け出す岬切れ間なき青
(五十嵐きよみ)岬から海をはさんで原発が見えるのだというちいさな漁村
(湯山昌樹)「父は今岬の測候所にいます」背すじ伸ばして答える少女
087:故意(1〜25)
(映子)故意でなくただ偶然を待つと云うそれはもう故意恋の待ち伏せ
091:覧(1〜25)
(映子)観覧車きみの後ろの空だけ見てたあの時僕は恋をしたんだ
(キョースケ)黙ったまま展覧会の券渡す絵画の前では饒舌なのに
092:勝手(1〜25)
(美穂)駅前の洋品店のシャッターに「勝手ながら」の貼り紙の文字
(葵の助)新築の我が家のオープンキッチンも母の煮物で「お勝手」になる
(お気楽堂)あきらめの悪い心が乗りうつり影が勝手に動きはじめる
(梅田啓子)勝手口よりぬるき風入る昼さがり精進料理のお膳ととのう
093:印(1〜25)
(美穂)お印の木香茨(もっこうばら)は広まりてフェンスに這わせる人の増えたり
(文乃)紙に残る文字の凹みに君の気配まで刻印するタイプライター
094:雇(1〜25)
(キョースケ)ニュースでは雇用の伸びを伝えても今日も片手に求職雑誌
(鈴木麦太朗)雇われているわたくしは生真面目にタイムカードをがっちゃんと押す