題詠100首選歌集(その24)

          選歌集・その24

005:返事 (117〜142)
(まる)「返事不要」と書き来る人の小心に戸惑いつつもメールを返す
016:捜(80〜104)
(こと葉)伝えたき言葉を捜す今はまだ心の秋の梢の辺り
(槐)連絡の時間過ごせる旅の駅待合室にただ二人きり
(さくら♪)おはようとおやすみ たったそれだけのメールでつなぐ家族連絡
035:因(51〜75)
(大島幸子)習わしに因んで若き切り花の茎を手折って夜店に飾る
036:ふわり(52〜76)
(白亜)夏休みの真中で少女は振り向いて、ふわりひるがえるちいさなさかな
(RIN)夕暮れと夜空のあひだのベランダに忘れたきことふはり佇む
(ゆき)めぐすりのあとのまばたきふりむけば窓からふはりマシュマロの月
038:華(51〜75)
(莢)中華鍋を揺する手を見る 私にはこういうことがうまく出来ない
039:鮭(51〜75)
(深影コトハ)君は多分ブルームーンを飲みながら猫に鮭缶開けている頃
(諏訪淑美)時鮭の呼び名初めて知りたるは北海道の旅サロベツの夜
(RIN)遡上する鮭思はせりひざ裏もまばゆき駅のきざはしの少女(こ)ら
078:棚(26〜51)
(原田 町)おおかたは捨てられる物ばかり棚にあふれて終活いまだ
(円)反射する海の明るさ受けとめてかはたれ時の棚田をくだる
(深影コトハ)本棚のひみつ (端からタイトルを繋げて読めば君の名になる)
079:絶対(26〜50)
佐藤紀子) 絶対に怒らぬからと言ひしゆゑ作り笑顔で終はりまで聞く
(じゃみぃ)絶対と思っていても妥協する弱い自分を斜めから見る
080:議(26〜51)
佐藤紀子)議事録をドアの下より差し込みて会議初日の仕事を終る