題詠100首選歌集(その25)

          選歌集・その25



018:援(76〜100)
(こと葉)応援は「あまり頑張らないでね」と友の言葉のやさしい音色
(長月ミカ)救援で見知らぬ人のもとへゆく君の防災グッズは買わぬ
019:妹(76〜100)
(まる)病める子に水をふふませ妹に雪取りて来し賢治を思う
020:央(76〜100)
(藤野唯)戸惑いの夜を刃物で斬るような中央線のやさしきひかり
(御糸さち)央の字になって眠っている人の布団を剥げば大の字となる
(こと葉) 窓枠の風景少し中央を外して心地よい席となる
ウクレレ)スピンする真の字、央の字 美しく左右対称ブレずに回る
021:折(76〜101)
(白亜)おしゃべりのきらいな少女がいくつもの折り鶴を今日、羽ばたかせてる
(谷口みなま)誰が為の治療だったか誰が為の入院だったか 薬袋を折る
(こと葉)秋空のあくまで澄みて一枚の真白き紙は折り鶴となり
(砂乃)鶴折れぬ子らが増えたり9条が淡き記憶の波にのまれる
037:宴(51〜75)
(白亜)たいくつをいくつもならべて更けていく夜の死骸だ、夏の宴は
040:跡(51〜75)
(はぜ子)均された秘密の基地の跡に咲く花の雌蕊は日陰のにおい
(民谷柚子)ぼくたちは清楚な雨さ傷跡を指でひらいて種を植えよう
(miki)モノクロのアルバムに生く父母(ちちはは)の 厳しき時代の跡を偲びぬ
(とおと)齧りあふ林檎のしるき食み跡を証しとなせば眩き夜明け
041:一生(52〜76)
(佐野北斗)一生に一度本気で好きになる人に出会ってしまったみたい
042:尊(53〜77)
(諏訪淑美)尊敬に値する師があったかと記憶のアルバム繰る昼下がり
044:発(51〜75)
(円)出発の時刻をとうに過ぎているプラットフォームのように明るい
(深影コトハ)この夜をたゆたう発光体となる 鱗のように剥がれるペディキュア
(佐野北斗)真っ青な空に一条雲はけば始発列車の扉がひらく
047:持(51〜75)
(谷口みなま)持ち物に不安を全部詰め込んでだからいつでも鞄は重い