題詠100首選歌集(その26)

        選歌集・その26


022:関東(76〜100)
(御糸さち)関東の悪口を言う人といて束の間わたし弁護士となる
(こと葉)関東は来週かもと台風の進路気になる予報円あり
(三船真智子)その昔なじめなかった関東も埼玉県は君の住む町
025:がっかり(76〜100)
(まる) がっかりとして後すぐに立ち直る楽天主義者と呼ばれて久し
034:由(53〜79)
(大島幸子)理由など聞かないままに受け入れる裏切り者の靴を揃えて
(御糸さち)いつか子に名付けの由を訊かれよう その時までには考えとこう
043:ヤフー(52〜77)
(RIN)ヤフーにも何ら例解なき問ひを閉ぢてカーテン引く夜の重さ
045:桑(51〜76)
(RIN)手を出せば握りきたりし生徒(こ)の笑みの桑の実ほどの赤さと甘さ
(永乃ゆち)桑の実を探して夕暮れ遠い声夜の間際はいつも悲しい
046:賛(51〜75)
(はぜ子)鳴り止んでしまうだろうか青空の賛歌は蝉の遺骸となって
(まる)ハングルと日本語混じる賛美歌の聖堂の屋根高く溶け合う
048:センター(51〜75)
(深影コトハ)パンプスで立つバッティングセンターでヒロインとして試されている
(谷口みなま)歓声はセンターフライとともに消え風船むなしく空にさまよう
(まる)弧を描きセンターラインを越えてゆくボールは夏の光をはじく
(矢野理々座)さっきからセンターラインなくなったうねうね道が岬へ続く
049:岬(51〜75)
佐藤紀子)海渡り吹き来る風になびきをり岬に生える芒の穂波
(まる)水尾引きて岬を巡る船の上(え)に君が手を振る波に揺れつつ
(ワンコ山田)海が無い暮らしの君をぐらぐらと岬へ誘うバスになりたい
082:チェック(26〜50)
(五十嵐きよみ)公演の日時を何度も確認し「同意します」にチェックを入れる
(コバライチ*キコ)秋風を青いチェックのカーテンがするりとかわす神無月の朝
083:射(26〜50)
(谷口みなま)廃業の小児科医院の受付の注射のご褒美シールのキティ
(諏訪淑美)静脈を探しあぐねる看護師の持つ注射針が凶器に見える
(五十嵐きよみ)反射的に否定したあと水紋のように広がりゆく自己嫌悪