題詠100首選歌集(その23)

             選歌集・その23


005:中心(95〜119)
(廣珍堂)ラーメンの中心にあるナルトへと麺が渦巻く大衆食堂
(青山みのり)授業中心のなかで唐突に糸のほどけてゆく音がする
010:玉(86〜110)
(さくら♪)お揃いのリュックで揺れるトンボ玉夕焼け空を映して帰る
(粉粧楼)雷も一息いれる午後三時玉露は甘く舌に転がる
(kei)二階からこぼれ手元に来る音符ザクザク一緒に刻む玉葱
013:刊(74〜98)
(美裕)夕刊をめくるあなたの横顔の涼しさ想い浴衣繕う
(牧童)取りに行く母亡き日々の朝刊は 読まれぬままに風雨に染まる
(青山みのり)選択肢はきっと他にもあったはず週刊ジャンプ読んでいた頃
023:柱(57〜81)
(廣珍堂)東塔の雲を支へし心柱朽ちし穴にも慈悲満ちてをり
(影山光月)電柱は停車駅ですじゃんけんで鞄持ち合う子どもにとって
(牧童)線香が母の残り香変えていく 柱時計の音も秋風
026:湿(60〜84)
(金井二六時中)湿っぽい話はやめて三角にアップルパイを切り分けている
(ドルチシマ・ミア・ヴィタ)濃き蔭をもとめてすわるしきものに湿りをおびて芝生のあをき
(青山みのり)携帯のアドレス消してと君が言い湿度の高くなってゆく部屋
083:憎(26〜50)
(はぼき)萌えキャラが言えば憎まれ口でさえツンデレとしてもてはやされる
(コバライチ*キコ)生憎の天気なれどもお湿りの京都もよろし糺の森行く
(さくら♪)最高の仲間それぞれ別れ行く卒業式は生憎の雨
(雪)憎まれ口たたいてみたい少しだけ困らせてみたい初めての秋
(牧童)母憎む思いは確かあったけど 風よ帰ろう幼き日々へ
084:錦(26〜50)
(雪)祖母の手は降らせはじめるひらふわと錦糸玉子のつやめく雪を
085:化石(26〜50)
(五十嵐きよみ)たいせつな化石のとなりに気に入りの冒険譚を並べて置いた
(雪)秋ごとに記憶の地層を掘りかえしこわれぬように取り出す化石
(わんこ山田)もうちょっと生ける化石として置いてときどきごろんと転げますけど
086:珠(26〜50)
(湯山昌樹)友人の弟逝けり三十二歳 せめて黒檀の念珠で送らん
(さくら♪)さらさらと想いの欠片こぼれ落ち有珠山に降るパウダースノウ
093:わざわざ(27〜51)
(五十嵐きよみ)ネットでも頼めるけれど都心までわざわざ出かけて書店を巡る
(雪)遠くまでわざわざ買いに行ったあと見つけてしまったお手頃価格