題詠100首選歌集(その13)

         選歌集・その13(8・14〜9・6)


001:地
(ひなたひとみ)ポケモンの地図に浮きたつスポットを探し歩いてお盆を終える
002:欠
(ひなたひとみ)欠損せし左足指冷えており靴下の隙あなたは知らぬ
003:超
(ひなたひとみ)超人の命をかけた祭典は爪切りの手をふいに止めたり
017:誤解
(山本貴幸)頑なな靴ひも解くやうにして君の誤解をやさしくほぐす
023:肘
(由子) 反日は生活苦からも来るだろう肘つかみ睨むこのチャイニーズ
027:どうして
(叶)幼な子はどうして?なんで?を繰り返しやがて瞳の深まりてゆく
032:村
(睡蓮。)最果ての村か南の密林か祖父の死想う終戦記念日
(Mamiko Kuwahara)かなしみを今日は忘れて選ぼうか村祭りに着る浴衣と帯を
033:イスラム
(叶)神おはす大天空を表せし青きモスクにイスラムを見る
(Mamiko Kuwaharaイスラムキリスト教とが交じりあうハギア・ソフィアの高い天井
036:味噌
(中西なおみ)幼子が作る味噌汁具は葉っぱ小枝の箸の夕焼けの中
039:迎
(叶)帰省子を迎へる親の年々と曲がる背中を目に焼き付けぬ
(廣珍堂)来迎の衣装をまとう祭りの日ぽっくり寺は浄土に浮かぶ
044:欺
(叶)自らを欺き流さるままとなり注ぐ夏日の身を焦がすごと
048:事情
(風花)あれこれと事情の多きそのひとの言い訳のクセ判り始めつ
(影山光月)事情など尋きはしないがなんとなく察してはいる夏の夕暮れ
050:凸
(廣珍堂)乙女らが凸なる胸に紅を秘めみどりの野辺を駆くる声する
051:旨
(叶)秋月を肴に交はす旨酒のしばし無言の友ここにあり
052:せんべい
(風花)西陽さす昭和の色した駄菓子屋のガラス瓶入りせんべい光る
053:波
橋本和子)歩調にも波起こりくる讃岐道母の故郷の麦穂の海で
054:暴
(由子)この世への暴雨なれども送り火は朝まで父が迷わぬように
066:瓦
(叶)堀切の場末を守る寺にあるあの鬼瓦はすこし優しき
068:国歌
(kei)しっかりと国歌うたえという声を湖底の古木に絡ませておく
074:弦
(五十嵐きよみ)我が開くネット書店のおすすめに羽生結弦がずらりと並ぶ
085:つまり
(muku)からっぽのため息の中終わる夏 つまり私は君が恋しい
086:坊
(八慧)逞しい暴れん坊が大好きと甘えん坊がいやいやをする
087:監
(八慧)臍下の監督責任問う人の拗ねてる声が胸に甘える
088:宿
(叶)夕餉どき河原住まいの宿なしの口笛かなし小走りで帰る
(八慧)宿帳に妻と記すを覗き見て君はすましてつんつん突く
089:潮
(叶)潮臭き水門近くの船宿の老ぼれ犬はオンと鳴きをり
090:マジック
(八慧)密やかにマジックミラー越しに見る君の半裸はやけに艶やか