北方領土と米軍基地

 今回の日ロ首脳会談を振り返ってみると、安倍さんの地元で会談をしたことも疑問だし、さしたる見通しもないままにプーチンさんに振り回されたという気がしないでもない。もっとも、長い目で見てどう評価すべきか、直ちに判断することはむずかしいのかも知れないが、一連の報道の中で、具体的な課題としてひとつ気になることがある。それは、米軍基地との関係である。
 政府の見解は、北方領土が返還されれば、米軍基地を置くことは可能だということのようである。純粋に法律論で言えば、それは我が国の主権に属する問題であり、米軍基地をどう評価するにせよ、その設置が可能なことは当然だろう。しかし、その主権の行使を一部留保し、「4島には米軍基地を置かない」という決断をすることも、主権の行使の一環として可能なはずである。
 ロシア側からすれば、「返還した結果、ロシアにとって軍事的に好ましくない事態になる」という結果を避けたいのは当然だろう。復帰後に米軍基地をどうするかは、硬直的な法律論ではなく、総合的な政治判断の問題として対応すべきではないか。交渉のテクニックとして硬軟を使い分けるという戦略的な意味もあるのかも知れないが、少なくとも、あえて相手が嫌がる壁をこちら側から作ることは適当ではあるまい。
 ある意味では枝葉の問題であり、全体がそれで片付くほど安易な問題ではないとは思うが、基地の問題に限らず、今後の折衝の中で、我が国の側にも柔軟な姿勢が求められるのではないか。