題詠マラソン選歌(過去ログ41〜50)

題詠マラソン、過去ログ41〜50。
 前置きは先日と同様なので省略するが、「要するに私の好きな短歌」という勝手な判断基準なので、どこまで一般性があるのかは自信がない。

[9828] 001:声 屋良健一郎 八重咲きの花と最後の点呼する教師の声が揺れる三月
[8771] 004:淡 瀧村小奈生 ギタリスト見つめる少女ひざを抱え淡い耳たぶ透けてゆく夜
[9176] 006:時 マツムラ 処女たちは嘘を覚えた 教会に初めて時雨が降った日の午後
[8657] 007:発見 小林成子 ミイラは発見さるるを待ちいしや石棺に灯のあたるさみしさ
[8192] 008:鞄 中澤あけみ 能登の海の風のにほひを閉ぢ込めし旅行鞄をしまはずにをり
[9009] 009:眠 HIKARU 明け方の触れゆくだけのくちづけに導かれるまま眠りに帰る
[8184] 010:線路 荻原裕幸 線路いまゆるくひだりへくだりゆきひかりの奥へひとりで入る
[9702] 013:焦 佐藤紀子 グラタンにうすく焦げ目のつく頃に家族が居間に揃ひ始める
[8344] 015:友 emi スカートの向日葵だけが咲いていた夏の記憶に友だちがいる
[8166] 016:たそがれ ぴいちゃん 菜の花のゆれるホームの回送車たそがれだけを網棚に乗せ
[8900] 020:楽 みあ 雨降りの木管楽器のシの音はすこしゆるめに坂道くだる
[9036] 020:楽 ひぐらしひなつ あなたへと綴る手紙をあたらしい楽章として秋を奏でる
[9594] 021:うたた寝 暮夜宴うたた寝の君の背中に少し泣く かけがえのないぬくもりだから
[9027] 022:弓 丸井真希 弓の字の形のまんま眠ってるふりしてお尻を近づけてみる
[8047] 028:母 中澤あけみ ははそはの母を離れて幾年を義母(はは)と暮らしぬ 冬の雨降る
[9635] 032:乾電池 かわぐち みつる からくりの乾電池無き人の身は音なく刻む体内時計
[8260] 034:背中 はぼき 向かい合うことがなくなりいつからか背中ばかりを追いかけていた
[8419] 035:禁 今泉洋子「通り抜け禁止」の看板除かれて素水(さみず)の匂ふ地震
(なゐ)過ぎし街
[8511] 036:探偵 今泉洋子「名探偵コナン」の画面に三回も余震を告ぐるテロップ流る
[8358] 044:香 白玉だんご 花の名に疎き身なれど路地路地の香り楽しむ春の自転車
[9583] 044:香 有田里絵 手を振りしあなたの髪の残り香を運ぶがごとく向かい風吹く
[9787] 044:香 はぼき 香りよきお茶を一杯淹れてみる一人で祝う記念日のため
[8000] 054:靴下 浜田道子 ちぐはぐの靴下はきて冬の夜を過疎地の医師は母を診たまふ
[8337] 059:十字 浜田道子 口元の紅を鏡に確かめて「十字路」といふ茶房に入りぬ
[9072] 060:影 武田ますみ 影ふみの子どもの影がひとつだけ足りない もうすぐ夕焼け小焼け
[9718] 063:鬼 尾崎弘子 わがうちに鬼の来る頃みはからいしづかにペンを置きたるゆふべ
[8878] 068:四 浜田道子 背もたれを深く倒してまどろめば四方の田より風の吹き来る
[8689] 080 書 冬野由布 書の墨をゆっくりとする今のこと今までのこと棚上げにして
[9565] 088:食 みずき 蜘蛛の食む蝶の化身の棲みつきて水辺に白き睡蓮の咲く
[9723] 090:薔薇 みずき 冬薔薇へダリの陰影なぞる風つめたき空のなほ真しろなる
[9570] 098:未来 足立尚彦 ふたしかな未来を過去となすためにセットしている目覚し時計
[8816] 100:マラソン 岩井聡 昨日の丘と明日の空の真ん中をマラソンすれば今日光る風
[9827] 100:マラソン 黒田康之 マラソンする女の腿に日が射して君に逢いたい休日が来る