題詠マラソン秀歌選(過去ログ161〜170)

 またまた題詠マラソン秀歌選。ゴールとなればさすがにペースが速い。ひところは1月経ってようやく過去ログが10溜まっていたものが、今日はほとんど1日で10溜まってしまった。追い付くのも大変だ。まあ、余計なことは言わずに、私もラストスパートを掛けよう。

     題詠マラソン秀歌選(過去ログ161〜170)

004:淡  岡田悠束  ことのほか淡い絵の具をつぎたして冬までかかる虹を仕上げる
008:鞄  津和歌子  むかしむかし鞄に夢を詰め込んだ少女も今は京都で暮らす
034:背中  片岡幸乃  裾曳きて花道に入る女形背中に男の汗を匿して
034:背中  岡田悠束  背中には父のにおいを潜ませて弟もまた中年となる
037:汗  片岡幸乃  今見たる夢は重かり汗ばめる浴衣を明けの山風に当つ
045:パズル  細江藻花  君が言うさよならはただ完璧でパズルの一片ぴたりと埋まる
054:靴下  遠野津留太  成り行きの Hotel Aporia 靴下は脱がなくていいもう夜が明ける
059:十字  五十嵐仁美  十字路の4つの角のお店みな同級生が後継いており
059:十字  井口瑛里  聖人の名一つ云えぬ肌白き鎖骨の窪み十字架揺れる
060:影  岡田悠束  雨雲の影濃く降りて遥かなる山辺の里は雨降らんとす
061:じゃがいも  長沼直子  好きなんてそう簡単にいえなくてカレーに入れるじゃがいもを切る
064:科学  五十嵐仁美  科学館でプラネタリウムを見た夜の子は夢の部屋に星を飼いおり
068:四  荻原裕幸  四枚のキングのなかで髭のないひとりのやうに秋を見てゐる
070:曲  荻原裕幸  曲面をたどるあなたのゆびさきがとびらにふれるまでの夕映
072:インク  足立尚計  黒インク流れ尽くした空き瓶に流れきたりし花一つ挿す
072:インク  五十嵐仁美  藍色のインクに落ちるぼたん雪手紙の最初は「今日から冬です」
073:額  水月秋杜  ケージごといのちの額面記(しる)されて仔猫と子犬がじゃれあっている
080:林  素人  留守番の子にメモ書きす「お願い」と林檎一個を重石において
083:キャベツ  素人  延々とキャベツの畝は続きをり半島鋭く海に突き出る
096:留守  宮沢耳  干したての夫の布団に寝転びつ留守居顔して迎ふる夕べ
097:静  かとうそのみ  静物と動物がありどちらにも入りきらないあなたが眠る
099:動  足立尚計  動くものみな荒神の宿るらし水には水の怒りもありて