題詠100首選歌集(その5)

これで選歌の在庫はしばらく品切れになりそうだ。とすれば、明日は私自身の残りの投稿をすることになるのだろう。いよいよリーチだ。今日も暖かい一日。そろそろ彼岸の墓参にも出かけなければならないが、外出するとついつい欲望に駆られて(?)、タバコを買ってしまいそうで心配でもある。(目下何度目かの禁煙中。マーク・トゥエイン曰く「禁煙するなんて簡単だ。私はもう何十回(何百回?)も禁煙した」。私も同様です。)



     選歌集・その5

002:次(119〜144)
(わたつみいさな。) 次々と破られてゆく約束も抱きしめるしかなかったんです
(ezmi)夕闇に名残の桜式次第さよならいつか花びらの舞う
(本田鈴雨) 二次元に閉じこめてある青春をひらけばかへらぬひとの笑へる
007:壁(86〜110)
(水都 歩)壁際の席ひとつありその席は白い帽子の君に譲ろう
(丸山汰一)「似てるね」ときみが笑ったマンションの壁の一番へたな落書き
008:守(74〜99)
(天国ななお) 神頼み嫌いな君に手作りの御守り持たせ送り出す朝
月夜野兎) 留守電の声でいいから聞きたくて携帯握り眠る真夜中
(水都 歩)手作りのチョコと一緒に渡されしお守り握り2次試験受く
(ハナ) 私からだけはあなたを守れない こんなに爪がのびてしまった
009:会話(72〜97)
(村上きわみ)さみどりに濡れる会話のなかほどにあなたが植えるいっぽんの楡
(水都 歩)チャットとふ文字にて語る会話してふと襲わるる寂しさは何
(橘 こよみ)不器用なわたしのことを自販機と会話するとき思い出してね
(ちりピ)会話するかわりにマルボロ一本をかわりばんこに吸った雨の夜...
011:除(37〜61)
(清水ウタ)除光液の色はピンク、ペディキュアは浮気なブルー、私ははだか
(じゃみぃ) 数行を書いては削除繰り返す君へのメール心決まらず
(梅田啓子) 茗荷の芽の幟のごとく突き立てる朝にアドレス一つ削除す
012:ダイヤ(37〜63)
(天昵 聰)ダイヤルの0が回って戻る間のようなあなたの大きなあくび
(水須ゆき子)LPにダイヤモンドの針を載せ永遠という錯覚を聴く
(酒井景二郎) 徒然にダイヤグラムに書き込んだ君の名前がそこだけ光る
(原田 町)ダイヤなぞもはや無用に曳かれゆくアントワネットの白き絵姿
013:優(31〜55)
(秋ひもの)公園で遊ぶ幼女がノコノコとついて来そうな優しい笑顔
(梅田啓子) 女優になると母を泣かしし日のありき駅の灯に蛾のぶつかりて飛ぶ
(新井蜜)冬の日の優しきひかり海の上(え)に彼岸に至る道をつくりぬ
014:泉(27〜54)
(大辻隆弘)かぎりなく静かと思ふ森かげの泉の底に砂は刷かれて
(梅田啓子)身のおくか泉あること知りてより少女のからだの乾きはじめる
ひぐらしひなつ)やさしさをさしだす胸の、でもいつか涸れる泉を思う十月
(水須ゆき子)この水は何を潤す数字かと源泉徴収税額を打つ
015:アジア(26〜52)
(泉)懐かしさを香(かをり)に秘めて茉莉花茶吾が血の中を流るるアジア
(たちつぼすみれ)明日の朝また昇るため陽は沈む中央アジアの砂漠辺りへ
(天昵 聰)バンコクへ飛び立つあなた見送ればアジアの色に染まる夕暮れ
(富田林薫) 魅入られる アジア雑貨の店先の武者ガンダムのような原色
(こはく) まっさらな地図をひろげてevianをこぼすアジアの果てのみどりに
(梅田啓子)アオザイチョゴリ・サリーがアジアンといふ若者の着物にふれず
016:%(27〜53)
(もよん) 確率が 10%の時だって 降るときゃ 降るのさ 空は気まぐれ
(大辻隆弘) %(パーセント)、その下部に立つ零の字の足もとおぼつかなきイースター
(こはく)あとおしをしたのは海に吹く風と%(パーセンテージ)に練りこんだ嘘
(湯山昌樹) 外を見つつ五歳の甥はつぶやきぬ「これが80%の雨か…」...