北原白秋顕彰短歌大会

 「北原白秋顕彰短歌大会」という短歌の会が、白秋生地の福岡県柳川市の主催で毎年開かれている。題詠100首というネット短歌の会で馴染みができたある方のお勧めもあって、ここ3年ばかり投稿していたのだが、今年私の作品が入選したので、多少の自慢話を兼ねて御披露しておきたい。柳川という土地とは格別の地縁はないのだが、20数年前に福岡通商産業局長として福岡に勤務していた頃に訪れたこともある土地であり、全く無縁の土地というわけでもない。それも投稿をはじめた一つの理由である。

 今年の投稿作品数は269首、ローカルな短歌の会としては結構レベルの高い作品が揃っているようだ。選者は高野公彦、伊藤一彦、宮英子の各氏であり、それぞれの選者が天賞1首、地賞2首、人賞3首、佳作5首を選んでおり、このほかに投稿者の郵便投票による互選で同様の数の入選作が選ばれている。

 私が入選したのは、伊藤一彦氏選の地賞であり、


    風邪引きて妻寝し後の茶を飲めば 深夜の如き九時十五分


との作品である。選者の選評によれば―――熟年の夫婦の歌だろう。それも仲の良い夫婦。「深夜の如き九時十五分」に夫である作者の寂しさがしみじみと出ている。さりげなく歌っていて味わいがある。―――とのことだ。この歌は、私自身比較的気に入っている作品であるが、選者の言われるほど寂しかったという記憶はない。むしろ「まだ宵の口なのに、深夜のような気がする」という一種の錯覚を面白いと思ったような記憶がある。まあ、これも一種の寂しさに通じるのかも知れないが。なお、大会自体は去る11月2日に行われたのだが、何分遠隔の地なので欠席させて頂いた。