題詠100首選歌集(その50)

 西日本は大雨の被害が随分出たようだ。被害者の方にお見舞い申し上げたい。私の郷里(山口県大島郡)も随分降ったようで、格別のことがなければ良いがと案じている。
 今日はプロ野球オールスター戦の第2戦、広島は雨との予報なので、試合ができるのかどうかも気になるところだ。



             選歌集・その50

007:ランチ(261〜286)
(本田鈴雨) ランチするといふ動詞わが使ひをりランチが目的にはあらぬとき
(椎名時慈) だんだんとディナーが減ってランチしかお誘いがない ひとり酒場へ
(桑原憂太郎)日替はりのランチのごとく指導する生徒の違ふ今週の午後 
013:カタカナ(229〜253)
(つばめ)我なりの革命信じカタカナでゲバラと書きし若きあこがれ
(天鈿女聖) 昨日から同じところで怒られて同じところでカタカナ使う
(tafots) 距離感を測りかねてる本名をカタカナにしたハンドルネーム
(吹雪)カタカナであなたの赤い心臓に突き刺すさよならカナカナが鳴く
(桑原憂太郎)父の名をカタカナで書く女生徒の右耳たぶのピアスはハアト
032:世界(151〜175)
(やや)愛しぬく決意できずに紫陽花は塀の向こうの世界を覗く
(ワンコ山田)この闇夜爆ぜる焚き火も無き暗さ世界が滅ぶ音がすり寄る
(岡本雅哉) 今日からはあなたとつなぐ右の手の丸みを世界と呼ぶことにする
040:すみれ(128〜153)
(松原なぎ) 丘に咲くいつかの夢でふくらんだ胸の釦はすみれの形
(bubbles-goto)プールからあがったあとはすみれ色した唇で焼きそばを食う
(穂ノ木芽央) 誕生日のすみれの鉢を信じずに電話を切つたときからの罪
(すいこ) すみれという名を持つ人のやわらかき色ひらがなの響きが似合う
047:警(104〜128)
(根無し草)警官に 職務質問 される度 顔にホクロが 増える体質
(花夢)幼少のころから母の警告は冷蔵庫にて冷やされている
(すいこ)街灯の夜警白昼みる夢に昇るだろうか陽や星や月
048:逢(104〜128)
(みぎわ)なんといふ思ひの退化 八月の逢ひは果たさぬとほき約束
(emi)逢うことの重さではかる日常とかけ離れゆく今日が終わって
(萱野芙蓉) なき人に逢ひて逢はざる夢のうちほのほのじろきおらんだ桔梗
(sora) 竹林の日照雨(さばえ)の中に立ちてみるふと逢えさうな気がする午後は
(橘 みちよ) 黒猫にあらず虎猫したがへて逢魔が刻の道をよぎりぬ
056:アドレス(76〜100)
(ぷよよん) あまりにもきみのアドレス簡単で空でいえてる自分が怖い
(五十嵐きよみ) 「舞踏会の手帖」に比べケータイのアドレス帳は便利だけれど
(村木美月)いつかまた名を呼ぶでしょうアドレスを消しても二度と逢えなくっても
(虫武一俊)別冊のアドレス帳を剥ぎ取った手帳が白く積もる引き出し
070:CD(51〜76)
(髭彦)褪せぬままCDとなりフェリアーの声深々と今なほ流る
(詩月めぐ)貴方から教えてもらった曲ばかりCDショップで探しています
(藻上旅人)君の立つコーナーの棚確認し偶然装うCDショップ
(ゆき)吾を恋ふと言ふ人の嘘ひとつづつ撥ねつけながらまはるCD
(西野明日香) 青春は内に残れりCDにマイケルジャクソンまっすぐ在りて
(流水) B面を捨てて久しいCDに哀しい歌が唄えるものか
071:痩(51〜75)
(KARI−RING)咳一つしているだけで痩身のコックは黙ってスープを煮込む
(中村成志)想い出は痩せてゆくもの上塗りの抱擁拒むぬいぐるみの目
(こうめ)別々の眠りにつくため街灯の光が痩せた道で別れる
(龍庵)正直に言うといつでも聞き流す昨夜の夢と痩せたい話
(西野明日香) 勘違いしない女になるために痩せぬ心でアングルを引く
(原田 町)水痩せし夏川わたる片恋の笠郎女しばし想いて
089:テスト(26〜50)
(野州) なづみつつ青を濃くする空に向けマイクテストの声を励ます
(ひいらぎ) 抜き打ちのテストみたいに携帯に残る着信たった一件