題詠100首選歌集(その48)

最後の方が、なかなか第2巡(50首)に届かない。去年の状況を振り返ってみたら、8月6日の選歌集が「その54」で、最終題が50首に達している。因みに、去年の9月14日の選歌集は、「その61」とある。それらと比較すると、今年は大分ペースが遅いようだ。秋とともに、ランナーのペースが上がることを期待しているところだ。


          選歌集・その48


002:暇(280〜304)
(ゆーこ)ザンパノがいない夜には暇だから指のすきまから覗く星空
(月原真幸)もてあます暇もなくして気がつけばすりへっている中指の爪
010:かけら(231〜255)
(紺野月子)焼き菓子のかけらが落ちて母という名前の私動き始める
(睡蓮。)あわてずにゆっくりお食べ幸せのかけらぽろぽろこぼす食卓
(蓮野 唯)指先を傷つけぬよう拾ってく死に行く恋の冷たいかけら
018:京(182〜206)
(本田瑞穂)お話がはずんでますね京野菜あしらってあるフランス料理
(まといなみ)轟きつとどろかせつつつつがなく東京スカイツリー伸びゆく
(ケンイチ)眠らない摩天楼に星は無く東京湾には届かない波
034:孫(128〜152)
(白田にこ) あのひともたれかの孫であのひともたれかの孫でみんな愛しい
(イノユキエ) 孫からもおばあちゃんとは呼ばれたくない人がいて疲れるわたし
(湯山昌樹)最近のことは忘れてゆく祖母も四十路の孫の顔は忘れず
(南野耕平) 孫にならあげてもいいと父は手にドングリひとつ握って笑う
(蓮野 唯)孫という歌が流行った思い出をお茶請けにする縁側デート
(お気楽堂)子へ孫へ伝わっていく血の絆いずれかの脚の湾曲すらも
043:剥(103〜128)
(こゆり)心まで抱いてほしいと言えなくてせめてマニキュア剥いで逢う夕
(白田にこ)やさしさをぬりこめないで世界から剥がれ落ちたいような朝には
(桑原憂太郎)教室に貼られし「みんな仲良く」の目標べりべり剥がす放課後
(黒崎聡美) 毎日をまわりのせいにしていると気がつきつつも独活の皮剥く
044:ペット(101〜125)
(ワンコ山田) 向日葵の俯くあたり終の巣にペットを終えた子を送る夏
(黒崎聡美)決断をできないままに春浅くペットボトルの水は冷たい
045:群(102〜126)
(希屋の浦) 夏の夜群青色の恋をしたあの日のようにわたしは眠る
(黒崎聡美) 制服の群がりを見る平日は猫背はさらに猫背へとなる
057:台所(76〜100)
(こすぎ)築100年鴨の葉色の台所 母一人だとこんなに広い
(高松紗都子) あかときの台所に立つ君の手がオムレツふわりとゆらす煉獄
(希屋の浦)実家では台所には母がいていつも優しい顔をしていた
074:あとがき(53〜77)
(原田 町) あとがきと解説を読み冷房のあまり効かない部屋にまどろむ
(音波)長い長いあとがきみたいな人生で あなたに謝辞を捧げて暮らす
(如月綾) あとがきを考えておこう この恋の話はそろそろ終わるだろうし
(sh) あとがきを読んだら夏は終わるからページを閉じる(おやすみなさい)
094:底(26〜50)
(行方祐美)二歳児に日に日に増えてゆくことば心の底ひを隠してゆかむ
(コバライチ*キコ)螺鈿敷く文箱の底はひんやりと元禄の夢閉じ込めており