題詠100首選歌集(その51)

 猛暑続きで今年は秋が来ないのかと思っていたが、雨とともに急に秋が来た。昨日より10度以上低い気温で、昨日までの暑さが嘘みたいだ。皆様どうかお風邪など召しませんよう・・・。(私も用心致します。)


            選歌集・その51


029:利用(156〜181)
(山田美弥)ご利用をしてるつもりでいたけれど計画的に利用されてる
(O.F.)ご利用は計画的に快適に下痢と便秘は不定期に来る
(石の狼) ご利用は計画的にと言われても もはや計画外の人生
030:秤(152〜177)
(南雲流水) 恋愛も秤売りで買えるから薄い水割りまた飲みにゆく
(本間紫織)知らぬ間に秤にかけてしまってる手にすることはないものばかり
(竹本未來) なめらかなひとひらのよる天秤に のせたあなたはもういないひと
(空色ぴりか)ふらふらと秤を揺らす風のなか煙草をふかしている西瓜売り
031:SF(152〜177)
(あおり) この本はおすすめだよと君が言い興味無かったSFを読む
(本間紫織) イニシャルがSFだった 夢みてるみたいに笑ってばかりいたひと
(田中彼方)ダイヤルを過去にまわして懐かしく、「ラジオSFコーナー」を聞く。
035:金(130〜154)
(さかいたつろう) この夏の苦くて甘いひと時を金麦として一気にあおる
(bubbles-goto)プールでのキスはなかったことにして金管楽器眠る教室
ウクレレ)金色の虹をいつでも描く人のいちずな恋を円にしてやる
036:正義(130〜154) 
(お気楽堂) かなしきは廊下の奥に戦争を見ることのないわたしの正義
(わだたかし)信じてた自分の中の正義さえ分からなくなり朝を迎える
ウクレレ) 八分目くらいがきっとちょうどいい腹の具合や正義感とか
038:空耳(128〜153)
(桑原憂太郎)ケータイの着信バイブも空耳のフリして午後の授業を流す
(蓮野 唯)妄想が膨らみ過ぎて空耳で告白されてうろたえている
(お気楽堂) 空耳と決めつけないでわたしには春の女神の歌が聞こえる
(おっ)青い空耳をすませば焼きたての入道雲の泡がはじける
(田中彼方) かくれんぼみたいに君としのびあい、「もういいよ」って空耳を聞く。
050:虹(103〜127)
(南野耕平)出来立ての虹をあなたに届けゆく途中で雨が待ったをかける
(蓮野 唯)大小の虹をその身にまとわせたシャボンのように煌めいた夏
(ともの)水注ぐ祖父のじょうろとプリズムに頭かしげて虹探した日
061:奴(77〜101)
(じゃこ)奴がまた手作りケーキ持ってきてうちの手作りおはぎが余る
(高松紗都子) 「好きな奴いるの」ではじまる恋があり秘めた思いは爪先あたり
(おっ)よく晴れた日の夕方は雨になる笑う奴ほどよく涙する
(村木美月) 辛口なジョークが似合う奴らだし身の程知らずな夜がはじまる
063:仏(77〜101)
(高松紗都子) ももいろで表紙にしるす仏蘭西語十七歳の春はけだるい
082:弾(51〜75)
(原田 町)ああきみは弾むがごとく歌を詠み弾むがごとく去りてゆきたり
(sh) 爆弾の代わりにそっと火を付けた線香花火は夕陽の重さ
(如月綾)不発弾みたいに眠っていた君の言葉に今更傷ついている