首都圏への集中の加速(平成22年国勢調査・その1)

首都圏への集中の加速(平成22年国勢調査の概要・その1)


 2月25日付けのブログでちょっと触れたように、昨年10月1日現在で行われた平成22年度調査の速報値が同日公表された。国勢調査データの整理や分析は私の最大の道楽であり、そのサワリ中のサワリは同日のブログに書いたが、多少肉付けしたものを数回に分けてご披露して行きたい。なお、2月のブログにも書いたように、ある雑誌に小論を載せたので、それを転載しようかと思っていたのだが、「転載」についてはその出版社の了解が得られなかったので、その小論とは別のものとして、このブログに書くこととしたい。もっとも別のものとは言っても、同じテーマについての同じような分析だから、大同小異の中身になることはやむを得ないものだと思っている。
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 2月25日にも書いたように、今回の調査結果の我が国総人口は1億2805万6026人であり、5年前の前回調査に比して、28万8032人、0.2%という極めてわずかな数字ではあるが増加を示している。今回調査ではてっきり減少の数字が出ると思い込んでいたのだが、これは意外な結果だった。それにしても、大正9年の第1回調査以来、戦後間もなくの昭和20年調査を除き最低の伸びであり、今回の人口微増という結果は、人口の増加基調を意味するものではなく、現在は既に減少に転じているのだが5年前に比べれば数字としては微増したということだろうと思う。
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 これを都道府県別に見ると、最も増加率が高かったのは東京都で4.7%の増、神奈川県、千葉県、沖縄県滋賀県、愛知県、埼玉県、大阪府、福岡県がこれに続く。増加したのは以上の9都府県であり、前回の15都府県を大きく下回っている。更にその5年前、10年前の増加都道府県数は、24、34だったのだから、すっかり様変わりの様相を呈している。
 この9都府県は、いずれも前回に続いての増加であり、東京都、神奈川県は、前回に引き続き1位、2位を占めており、9都県中関東が4都県を占めて、首都圏中核部への人口集中を示している。他方、前回増加していた兵庫、静岡、栃木、三重、岡山、京都の各府県は、今回減少に転じた。また、地方別の合計を見ると、これまで増加していた中部、近畿の両地方も減少に転じ、増加した地方は関東地方だけになった。
 減少県を見ると、秋田県の5.2%減を筆頭に、青森、高知、岩手、山形をはじめとする各県が、4%前後の減少を見せている。特に秋田県は、前回に引き続いて減少率トップとなり、東北地方全体を見ても3.1%の減と、他の地域の減少率を上回っている。これらの数字は、当然のことながらこの3月の大震災とは無関係の数字であり、大震災により、東北地方の人口減少傾向に、なおさら拍車が掛っているものと思われる。
ここ何回かに見られた傾向ではあるが、首都圏によって代表される都市部のみが栄えるという傾向がいよいよ顕著になって来たようで、これからの全国や地域の施策は、このような「ひずみ」にいかに対応して行くかということが、ますます肝要になって来ると思われる。
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 それでは大都市の人口推移はどうか。まず10大都市を見ると、東京23区、横浜市大阪市名古屋市、札幌市、神戸市、京都市、福岡市、川崎市さいたま市と続き、これは前回調査と全く同じ順である。以下、広島市仙台市北九州市千葉市堺市新潟市浜松市熊本市相模原市静岡市岡山市と続く。なお、近来の大規模合併の結果、政令指定都市は大幅に増え、以上の諸都市のうち、熊本市以外の各市は、いずれも政令指定都市となっている。熊本市の場合は周辺地域との合併が比較的遅れたため政令指定都市になるのが遅れたが、既に指定に向けて動いているようである。
 東京23区を区別に見ると、平成7年調査では江戸川区練馬区以外の各区はすべて人口が減少していたのだが、前々回調査では4区を除いて人口増加に転じた。前回は更に進んですべての区の人口が増加したのだが、今回も同様に全勝となり、ひところとは様変わりの状況である。特に中央区の人口は、24.8%増と全国トップに次ぐ伸びを示したし、その他の区も復権が著しい。地価の低位安定とこれに伴う住宅再開発の進展とともに、都心回帰の傾向が顕著に現れている。他方、その裏返しとして、首都圏周辺部の伸び悩みあるいは減少という「地域の選別」の時代に入って来たということも言えるのではないかと思う。
 また、大阪市の人口は、昭和40年を戦後のピークとしてずっと減少傾向にあったのだが、前回久々に増加し、今回も同様に増加している。大阪市は、大都市の中では最も面積の小さい都市の一つであり、同市の人口減少傾向は、大阪大都市圏の中での都心空洞化の現れだったと思われるが、東京23区の復権と同様、大阪市の場合も都心回帰現象が生じて来たと見ることができるだろう。
 今回調査の結果、人口30万人を超える大都市は85市になるが、その人口増減を見ると、京都、北九州、新潟、浜松、静岡、東大阪、尼崎、長崎、横須賀、岐阜、長野、和歌山、奈良、旭川、高知、いわき、前橋、郡山、秋田、久留米の20市の人口が減少している。今回の区画で見れば、このうち京都、新潟、浜松、郡山、久留米の各市の人口は、前回は増加していたのだが、このほかの15市の人口は前回に続いての減少である。これら大都市クラスでも安閑としてはいられなくなったというのが、現在の状況だろう。