男と女(スペース・マガジン4月号)

 例によって、スペース・マガジン(日立市で刊行されているタウン誌)からの転載である。


        [愚想管見] 男と女         西中眞二郎

 色っぽいテーマのように見えるかも知れないが、残念ながらそうではない。私の道楽である国勢調査の「性比」の話である。性比というのは、男性の数を女性の数で割った比率であり、平成22年調査によれば、我が国総人口の性比は94.8で、女性の数の方がかなり多い。その理由は、女性の方が寿命が長いということに尽きるだろう。実は、昭和15年の国勢調査までは男性の数の方が多かったのだが、昭和20年調査で男女逆転して以来、現在に及んでいるものである。
 ところで、生後1年未満のゼロ歳児の性比は、104.8と、男性の方がかなり多い。生物学的には、オスよりメスの方が強く、男女の数のバランスをとるために、胎児の段階ではオスの方が多い仕組みになっているということのようだが、医学の進歩などにより死産や新生児の死亡数が減ったため、「神の摂理」に少々狂いが出て来ているのかも知れない。この「男性優位」は49歳まで続き、50歳になって、やっと女性が同年齢の男性の数を上回ることになる。そして、トータル人数の累計では、73歳になって、はじめて、女性が男性を上回るようになる。それ以降は、高齢女性の増加により、「女性優位」の状況が強まり、全体の性比では女性が5%以上上回るという結果になるわけである。
 年齢別の人数を細かく見ると、平成22年調査時点では、最も人数が多いのが61歳の226.2万人、このほか60歳から63歳までと37歳の人がそれぞれ200万人を超えている。これに比し、ゼロ歳の人数は104.6万人に過ぎず、61歳の人数の半分以下である。ついでに横道にそれると、44歳の人の数が141万人と、その前後に比して20%以上少ないのだが、調査時点での44歳の人とは、昭和40年10月から41年9月の間に生まれた人々である。昭和41年は、60年に1度の丙午(ひのえうま)に当たる年であり、現代社会においても、古くからの迷信が依然健在だと言えそうだ。
 以上の性比を地域別に見ると、神奈川県と埼玉県のみが100を超えて男性優位であり、愛知県、千葉県、茨城県がこれに続く。逆に最も低いのが長崎県、これに鹿児島県、宮崎県、秋田県と続き、いずれも80%台後半である。
 話のタネまでに、市町村単位で見ておこう。性比が一番高いのは、東京都青ケ島村の175.3、次いで同じく東京都の小笠原村沖縄県北大東村と、離島の村が続く。概して厳しい生活環境のため男性の単身者が多い地域のようである。逆に性比が最も低いのは、79.8の和歌山県古座川町で、山口県阿武町、北海道の歌志内市上ノ国町静岡県熱海市と続く。概して高齢者の多い過疎の町が多いようである。ところで、政令指定都市の「区」にまで対象を広げると、京都市東山区が73.3で女性率断然トップ、福岡市中央区の80.0が第三位になる。東山区は有名な花街祇園を含む地域であり、福岡市中央区も中洲をはじめとする福岡市の盛り場を含む地域である。いずれも「女の町」という性格を持っていると言えそうであり、その点は上記の湯の町熱海市も同様である。(スペース・マガジン4月号所収)