題詠100首選歌集(その6)

 選歌の在庫がなかなか貯まらない。あと1首で25首になるというところで、足踏みしている題が結構多い。案外今日・明日あたりで突然「適正在庫」の題が増えるのではないかという期待を持ちながら、やっと選歌集・その6に届いたところだ。

     
        選歌集・その6


001:咲(73〜97)
(知己凛)寒空に傘の花咲きモノクロの世界を刹那に変える七色
014:壇(28〜53)
(こみゆ唱)私にはないものを持つ壇蜜の鎖骨をついつい冷たく睨む
(原田 町)塀がわりのボーダー花壇この春は何を咲かそうカタログめくる
(五十嵐きよみ)本棚の整理は今日もはかどらず『歌壇』の黄ばんだページをめくる
015:艶(26〜50)
(原田 町)後添いは娘のような年齢とサークル仲間に艶めく噂
(五十嵐きよみ)「艶」という題を詠む間にあでやかとつややかの差を考えてみる
016:捜(28〜53)
(原田 町)捜索は打ち切りとなり釣り人を呑みたる海の今日も荒れたり
(由子)すぐに出るはずのデータを捜してる色分けしすぎた付箋の森に
(秋霞)チャンネルを次々かえて夜もあけて自分捜しのブラック珈琲
017:サービス(26〜51)
(ひろ子)次にあるサービスエリアで車停め告げぬ思ひと空き缶捨てむ
018:援(26〜50)
(こみゆ唱)援助する立場の僕の方だけが粉骨砕身している不思議
(五十嵐きよみ)応援の声が静まり「月光」のソナタに乗せて滑り出すひと
019:妹(26〜50)
(小原更子)三姉妹の祖母の葬儀に祖母よりもしわを刻んだ祖母の顔二つ
(湯山昌樹)かつて我が肩を噛んだる妹も早五十歳の声を聞きたり
020:央(26〜50)
(天国ななお)午後二時の中央卸売り市場 魚はとけて海へとかえる
(小原更子)中央の座席を避けて一人いてあまたの人にスマホで交じる
(希屋の浦)わたしだけ世界の中央にいるのだと勘違いして走ってた春
(五十嵐きよみ)中央線の車窓にいきなり一面の菜の花 今年も春が来ていた
032:叩(1〜25)
(葵の助)叩いてもしゃがんで静かに諭しても子はスーパーを駆ける 泣きたい
(@貴)平生のあはひにきみを思ひ出す土竜叩きのごとき恋はも
033:連絡(1〜25)
(紫苑)人影の絶えてひさしき玻璃まどの連絡通路に月光の棲む
(葵の助)「ご連絡」社用メールに見せかけて視線をデスク越しに絡める
(美穂)落ち着けば連絡すると言ったけど明日にしよう月がきれい