題詠100首選歌集(その12)

            選歌集・その12

006:婦(69〜94)
(ゆみこ)農婦らの絣の背にも夕陽射し待ち構えたり皆既月食
滝音)労働が苦手でなりたい主婦だけどだったらムリだと皆に言われる
(只野ハル)婦人誌の表紙を飾る女優たち知らぬ顔増え買うを躊躇う
007:度(64〜88)
佐藤紀子)とろとろとしては何度も目ざめたり余震の続く冬のひと夜を
(美亜)何度目の約束だろうヒマワリの種の数だけ待ち侘びて夏
009:異(61〜85)
(RussianBlue)様相は異形のものであるような永きを生きる醜き大樹
(エクセレント安田)異性だと 意識しすぎて 喋れない ほんの少しの 勇気が欲しい
佐藤紀子)「異常なし」と言はれることを想定し検診に来し我と思へり
(廣珍堂)全集の異界編だけ重くなり泉鏡花が後ろから来る.
010:玉(61〜85)
(蓮野 唯)乱舞する虹を描いたしゃぼん玉作者は無心にストローを吹く
(新野みどり)ビー玉を小さなバッグに潜ませて海が見えてる街に行こうか
佐藤紀子)九州の故宮展にて先ず探す玉でできたる小さき白菜
(くゆり)玉飾る君のうなじにふと二十年前のこと思い出してる
027:ダウン(35〜59)
(文乃)フリースもダウンジャケットも脱ぎ捨てて子らは春へと駆け出していく
(原田 町)仕舞いかけのダウンまた着て花冷えの街に豆腐や長葱を買う
028:改(35〜60)
(文乃)改札に鋏を鳴らす音が消え機械は平らな切符吐き出す
(五十嵐きよみ)改めて読み直したい 前文と第九条の「戦争放棄
(原田 町)改訂はできないというルールにてわが投稿歌またもしくじる
佐藤紀子)改めて虚しさがまたこみあげる 娘の挙式終へたる夕べ
031:認(26〜50)
(はぼき)認めたくないことだけど確実に時計は進み期限がせまる
(湯山昌樹)子供らの努力を認めページごとゴム印を押す われもまた楽し
063:丁(1〜25)
(志稲祐子)本当の名前を知らない二丁目の通りの八百屋がなくなっていた
佐藤紀子)「丁度よい」と十歳が言ふ9号の私のブラウス試着してみて
064:裕(1〜25)
(映子)放課後の三番館は二本立て裕ちゃん旭健さん錦ちゃん
066:缶(1〜25)
(横雲)缶コーヒー頬にあてればほの熱く梅探る日のベンチにふたり
(志稲祐子)ストレスがストレスでしかなかった日缶チューハイがやたら飲みたい
(きむろみ)空き缶に蝶を閉じ込め埋めたのち土に喰はれるまでの秘め事
(原田 町)ひさびさに富士山を見る梅雨晴れの朝は微糖の缶コーヒー飲む